1. いつもじっとしていません 姉は小三、弟は五歳です。口うるさく言ってはいけないと思いながら、落ち着きのない長男に文句ばかり言ってしまいます。上の子が女の子であまり手がかからなかったのですが、それと比べると大違いでやることなすことが気になって最近はへとへとです。主人に言っても男の子はそんなもんだといいながらあまり子どもの相手をしてくれません。このままいったら将来異常になって問題を起こさないかが心配です。お母さんは女姉妹の中でお育ちになったか、おとなしいお兄さんがおられませんでしたか。親は自分の生い立ちを下敷きにして、子どもに接します。だから、自分の経験したことのない状態や子どもの態度にとまどうことはよくあります。姉だった人は長女、長男に自分と同じ頑張りで年下の面倒をよくみろと言い、一方年下の方には甘くなりやすいでしょう。また妹であった人は年上の子に色々と要求することになり、下の方には甘くなります。いずれも年上の子どもにとっては親からの要求は多くてきつくなりがちです。自分の経験のない序列の子には極端に甘くなるか、逆に厳しくなるようです。お母さんはすでにご自分の生い立ちや、お姉さんと違う弟さんの言動にとまどっておられます。お子さんがおかしいのではなくお母さんが未経験だという認識がまず第一です。 それに想像力が必要です。「もしわたしが男の子だったら、何をしたいのか、誰と遊びたいか、友達に負けてどれだけくやしいのか。お母さんにどれだけ甘えたいのか、どのくらいみんなの前で威張りたいのか。」を想像してみることです。心理学では男性であっても心の中に女性の部分(アニマ)があるといいます。女性の中にも男性の部分(アニムス)があります。母親は子どもの立場だけでなく、異性の立場からも見てみるのです。異常ときめつけないことです。 また、お子さんが落ち着いている時はどういう時でしょう。よく寝られた時、疲れてない時、好きなことに夢中になっている時、そしてほめられた時です。口うるさいのはお子さんへの愛情がある証拠ですから、大いにやってください。ただ文句や注意をしてそれをやった時、必ずほめましょう。そうすると文句をいった分だけほめることになります。落ち着かない子どもの心には文句でもよいから、関心を持ってもらいたい、お母さんもっとぼくをほめてという気持ちがあるのです。ひたすら自分のイメージと違うお子さんの言動に文句をいっても実りはありません。「よしよし」「よくがまんしたね」「元気にあばれたね」「人に迷惑をかけなくてとても嬉しいよ」こんな言葉は子どもにとってよい暗示効果があります。「無条件でお前を愛しているよ」の表現です。やってみてください。(関 輝夫)2. 落ち着きがない四歳の男の子です。落ち着きがないので困っています。先日の保育参観の際も先生の言うことを聞かず、叱られてピアノの下に隠れてしまいました。家庭では好きなことには真剣に取り組んでいます。こんな子どもを落ち着かせるにはどうしたらよいのでしょうか。お子さんが保育参観の時落ち着けなかったのは、幼稚園にお母さんが来て嬉しかったのかもしれません。子どもは好奇心が旺盛なので、一見落ち着きがないように見えます。しかし、その一方では自分で興味を持ったことに対しては、大人が驚くほど集中して物事に取り組むことができます。落ち着かないということは、物事に集中できないということでもありますが、見方によっては、何にでも興味を持っているということにもなります。 子どもに落ち着いて何かやってもらいたいと思う場合は、彼らがもっとも興味を持つことをやらせるとよいのですが、子どもが好むことばかりさせるわけにはいかない場合もあります。是非やってもらいたいと思う場合は、それに興味を持たせる工夫が必要になります。 幼稚園の先生は、新しいことを計画する際、子どもがそのことに興味を持つように工夫を凝らします。プロの先生でも一人一人の子どもが計画にそくして動いてくれるように配慮することはとても難しいことなのです。 お子さんは家庭では好きなことには真剣に取り組むことができるそうですね。自分が興味を持っていることに夢中になれるなら一安心です。集中して何かを生み出す面白さを知っているので、今は落ち着かないように見えても、集中してやり遂げる力を持っています。やりたいものがあると、落ち着いて取り組むことができるにちがいありません。先生の指示に従えるようになるには、その先生が好きになることです。そのためには子どもが先生を求めてきた時、先生も誠意を持ってそれに応えることが大切です。子どもは好きな先生の話を聞こうとします。その上先生の困ることはしたくないといった優しい気持ちも生まれます。担任の先生を好きになるため案外大切なことは親が先生に好意を持つ必要があるということを書き添えておきましょう。(立川多恵子)3 わがままで泣いて我を通す三年保育で入園して、現在四歳になる男の子です。自己主張が強く、わがままで落ち着きません。いつもちょこちょこして、テレビを見るにも自分勝手で泣いて我を通そうとします。母親に対しても素直さがな く文句ばかりです。思うようにならないと大声で泣きわめきます。頭にきて、つい怒鳴ったり、お尻を叩いたりしてしまいます。これからどのようにしていった らよいのでしょう。 きっと、このお母さんは、連日、元気のいい坊やとの格闘に、いささかお疲れのようですね。多かれ少なかれ、母親はみんなこんな経験をしているのです。「ああ、うちの子はいい子だ。」と真底思い、心穏やかに、にこやかなほほえみを浮かべて、優雅な子育て生活をおくりたいと誰もが望みながらもそうはいかないのが現実ではないでしょうか。 大きな問題をいっぱいかかえている子のようにも思われますが、見方を変えれば、きわめて一般的な普通の子でもあるわけです。ただ、対応を考え、賢明な導き方を今すぐに始めなければならない段階にきていると思われます。四歳くらいの年齢の子が、我を張り、自己主張をするということは、極めてノーマルな発達をしている証拠です。自分勝手な行動や、泣きわめくのは、自分が受け入れられてない、つまり否定されていると感じているから、自衛手段としてとっている行為なのです。母親に素直になれない子は、もっと甘えたい、もっと愛されている実感をつかみたいと強く望んでいるから反抗的になるのです。母親にしてみれば、我が子を愛しているのは当然のことで、だからこそ、朝早くから夜床に入れるまで、バタバタと一日中世話をしているのじゃないかという言い分があるのですが、子どもの側からすれば、労働面の世話より、もっと心理的に、心地良い関係を望んでいるのです。おわかりいただけるでしょうか。 さて、愛のメッセージをどのようにするか。それは一つ一つ、こんなことはしてはいけない。これはやらなければならないこと。といった具体的な場面で、ていねいに教えていくことから始めなければならないのです。「テレビはみんなが見たいでしょ。」というセリフの中味を、本人が納得いくまで何度も繰り返して話さなければなりません。最初は勝手な言い分を通そうとしていた子も、まず他人の立場というのが少しずつ見えてきた頃から変わってくるでしょう。 「本当はとてもいい子なんだね」と、時々抱っこしながらほめてあげれば、どんなに喜ぶことでしょう。自分から悪い子になろうとしている子は世界中に一人もいないのです。お母さんの根気づよい説得が変身の決め手です。お父さんの協力はもちろん必須条件です。(森本 邦子) 4 何事にも集中できない 年中の男の子です。多動で何事にも集中することができません。走り回っていて人の言うことも聞けず、回りに 迷惑をかけてばかりです。静かにしなさいと注意すると「わかったよ」とは言うのですがすぐに動き出してしまいます。落ち着いて話をしたりできないのです。 ことばはむずかしいことばをよく知っていて使いますが、ものを書いたりはほとんどしません。 集中して行動ができない、興味がどんどん変わっていく、会話能力には問題はないのですが、ともかく興味が変わっていく子どもがおります。指示したことに少しは従うのですが、すぐにやめてしまうのです。色々な遊具のあるプレイルームでは、一つのおもちゃに興味を示すから、やり方などを教えますと、一分か二分でやめてしまいます。次にはもう別のおもちゃに興味がうつってしまうのです。そうか、そちらの方がやりたいのかと言って説明しますと聞いていて、ちょっとやってみます。競争的にやってみようと今度はわたしがやるよというと、うんと順番をゆずってくれるのですが本人は別の遊具に興味は変わってしまうのです。集中できないというよりも長続きしないのです。遊具などに興味は示すのですがすぐにかわっていきます。集中できないというよりも集中持続しないのです。 この傾向を持つ子どもは注意欠陥、多動性障害(AD・HD)という診断がなされる子どもです。原因は脳障害からと言われ、投薬によって落ち着く子どもも多く見られます。 自閉性のある子、自閉症的な子どもも、自閉症の程度によっては集中しない子どもの様子を示す場合もあります。この場合は自分で好きなことか興味のあることには集中するのですが、自分の好きかってに行動しますので、特に指示したり、注意をむけさせても、そこには集中しないのです。 もう一つのタイプに、能力面に大きな差が見られ、多くの能力側面を見てみますと平均かそれ以上よいのですが一つか二つの能力面で大変に劣る学習障害と言われる子どもの中に一般的には集中しない子どももいます。これがL・Dとか学習障害と言われ、やはり脳障害からで環境要因ではないとも言われているものですが集中持続力に欠ける子どもです。 これらの問題行動児については発現してからの研究も少なく不明な点も多いので教育相談や育児相談の専門機関に相談してみてください。指導はどの問題も適切なものは少なく、何人もが共同し、力をあわせて色々の方法を工夫して、よかれと思うものを実施するしか方法がありません。(金子 保) 5 思い通りにならないとすぐ興奮する五歳と三歳の兄弟の上の子です。自分の思い通りにならないと興奮し、頭や体を壁や物に強く打ち付けます。親が怒るとますます手がつけられなくなります。最近は、幼稚園でもこのようなことを起こすようになったようです。どうしたらなおせるでしょう。 カッとなって物に当たる激しい方がご家族の中にいませんか。お子さんがカッとなる直前に、頭から「だめ!」「そうじゃないでしょ!」というような言葉で、誘発させていませんか? その時のあなたの語調は、顔つきは、視線は、どうでしたか? そして、カッとなって直ぐ「怒るんじゃない!ばか!」などと怒鳴りませんでしたか? 子どもは親を手本(モデリング)にするものです。自分の思いが通らない親の姿をそのまま再現しているのです。表面に出さなくても心の中の爆発性は同じです。 だから、わが子を穏やかな子にしたかったら、穏やかに語りかけ、優しい子にしたかったら、優しく接することです。それには、お子さんに「密接距離で、声は半分、うなずこう」を心がけてください。自傷行為の子はスキンシップ不足です。他の兄弟が可愛がられ、スキンシップをしてもらっているのに、自分からは「して!」と言い出せないのです。親が弟をほめると、自分が見捨てられたのではというおびえも起こります。「攻撃はおびえ」なのです。 固い壁にぶっつけた時、止めてもらいたい、かばってもらいたいのです。お母さんの胸や体でクッション代わりに抱き留めてあげましょう。そして二人だけの内緒話ができるような半分くらいの声で話しましょう。ゆっくりとうなずきながら、何を言いたいのか、何を怒っているのかを聞きましょう。お子さんは聞いてもらって気持ちを受けとめてほしいのです。暴れた理由も言い始めます。友達にばかにされたから悔しかったとか、弟の方が得しているとか、お父さんが約束を守らないなど本心が出てきて、「カッとなるのは無理もない」と理解できます。 落ち着いてくると「僕だって暴れたくないんだよ」と言うこともあります。そこで十分に聞いた上で、「それにはあなたがどうしたらいいのかな」「お母さんにどうしてもらいたい?」と聞いてみます。気持ちが分かったら「よく本当のことをいってくれたね。嬉しかったよ」と抱き締めてあげましょう。どんなに言い合っても最後は気持ちよく終わりましょう。「北風と太陽」の話と同じです。子どもの心をほぐし、穏やかにさせるには、お母さんの温かい「お前は大切な子だよ。どんな時も味方だよ!」の心で語りかけることが一番です。(関 輝夫) 6 いじめられている いじめられている四歳の子、幼稚園に体の大きい子がいて、叩かれたりつつかれたりしているらしいのです。そ れでもその子の後についていくので情けなくなります。家も近所ですぐ誘いにくるんです。本人は嫌なことをさせられるので遊びたくないのですが、断わるとい じめ泣かされ、あとでも仲間はずれにされるので、仕方なくつきあっています。どうしたらよいでしょう いじめっ子は家の外では加害者でも、家の中では犠牲者になっていることがあります。家では案外よい子を演じていて親が気がつかない場合が多いのです。他の兄弟の方が可愛がられていると嫉妬していたり、お母さんが仕事に忙しかったり、夫婦関係がぎくしゃくして、子ども自身が欲求不満になっています。問題家庭では親のストレスを子どもにぶっつけている場合もあります。 従っていじめられたら、単なる子ども同士のこととして考えずに、相手の親に穏やかにいじめのことを話して注意を喚起し、いじめないよう協力してもらうことが大事です。幼稚園での場合は必ず担任の先生、園長先生の耳にだけは入れておいて、守ってもらうことです。 いじめが変わらない時は、対策をたてておく必要があります。お子さんが「いじめられるから行きたくない」と言ったら、その意志を尊重しましょう。 子どもは一人で孤立していると狙われやすくなります。なるべく気の合う友達と一緒にいるといじめにくくなります。お母さん同士が親しければ、子どもの味方も増えるし情報も入ってきます。またいじめられる子も、嫌なことを嫌といえる練習が必要です。家でも親がたたみかけるようにいわないで最後まで、じっくりと子どものいうことに耳を傾けましょう。十分に親子で話し合い、心の補償がなされると、基本的な安心感と勇気が出てきます。 その上で、いじめられないためには、条件つきで遊ぶことを教えたらどうでしょう。いじめっ子が誘ってきたら、「僕のこと叩いたら帰るからね」とか「四時まででいいんなら遊んでもいいよ」と言わせましょう。約束を破ったら遊ばないわけですから、最初に主導権を握ってしまうのです。後になって嫌な思いをしないように、遊びが始まる前に要求するのです。遊ぶ前なら相手にまだ拘束されていないのでずっといいやすいはずです。(関 輝夫) 7 仲間はずれにされている 年中の女の子です。同じマンションに住んでいる四人の女の子と遊んでいますが、何時もうちの子だけが仲間はずれにされています。それでも懲りずにみんなのところへ行きたがります。同じマンションなので親に苦情をいうことができなくて悩んでいます。 子どもは三歳を過ぎる頃になると、友達を求めて戸外に出たがります。しかし始めのうちは他の子の遊んでいるのを見ていたり、自分なりに好きなことをして遊びます。 友達と遊び始めたと思っても、友達の遊ぶそばで同じような遊びをしています。こうした遊びは平行遊びといって、仲間遊びに入る前段階の遊びなのです。 仲間との遊びを楽しむことができるようになるためには、遊びのイメージが共通になる必要があります。そのためには友達とぶつかり合ったり、さまざまな葛藤を経験しなければなりません。 お子さんは幼稚園に通っているので、遊ぶ時「入れて」という言葉を使うとよいことを知っていると思いますが、子どもの世界では「入れて」と言っても、「だめ」と言われることがあるのです。するとすぐ退散してしまう子どももいますが、一緒に遊びたいという気持ちが強いといろいろ工夫します。 お話では何時もお子さんだけが仲間はずれになっているので悩んでいるということですが、それでもお子さんはみんなのところに行きたがるということ、きっと友達の遊びを見ているだけでも面白いのかもしれません。今は仲間遊びに入れないとしても、それは過渡期的な現象だと思います。もしそうだとしたら、この時期お子さんはとても大事な経験をしているのです。一見苦労しているように見えても、大切な人間関係の学びをしているといえます。したがって、気長に見守ってやって欲しいと思います。例えお母さんが「うちの子も仲間に入れて欲しい」と頼んでも、子どもたちは一時的にはともかく、親に頼まれたからといって、無理して一緒に遊ぶことはできないのです。外されても懲りずにみんなのところへ行きたがるお子さんの意欲がきっと問題を発展的に解決していくことと思います。お子さんが遊びの中で自分の力で役割が取れるようになった時初めて、お母さんが期待する仲間遊びへの参加が実現するのです。仲間遊びの成立するプロセスの中で子どもは沢山の大事なことを学んでいます。(立川多恵子)8 行動が乱暴で困っています五歳になる男の子です。健康でよく友達とも遊ぶのですが、元気がよすぎて、よく友達と喧嘩をし、相手にけがをさせることもあります。言葉も達者でいばっています。暴力を使って はよその子を泣かせるので困っています。このような暴れん坊は、優しい子にはなれないのでしょうか。 健康な子は、十分に運動エネルギーを発散させて、力いっぱい遊びたいわけですから、少しくらいあばれても心配ありません。むしろ、「あばれる」ということは、元気であることの証拠といってよいでしょう。とくに、三~四歳ごろの幼児は、自分の考えを、じょうずに言葉を使って相手に伝えるよりも、まだまだ、身体で行動することで表現することが得意なのですから、元気であばれまわるのは、しごく当然のことといってよいでしょう。時には、先に手が出て、友達とけんかしたり、小ぜり合いすることもよくあります。 しかし、幼稚園など集団生活の場で、担任の先生の手をやかせる乱暴な子のいるのも事実です。こうした子は、時には友達にけがをさせたり、大切なものを壊したりして、親から苦情をもちこまれることもあります。このように、乱暴なあばれん坊と一口にいっても、元気がよすぎるくらいの子から、問題児扱いを受けてしまうものまでその状態はいろいろです。そこで、特に乱暴な子といわれる子を分類してみると、(1)は、体力的にも、能力的にももっと活動したいのに、親のしつけが厳しかったり、住居の関係でエネルギーを抑えられている子で、幼稚園など開放できる場を得ると爆発的に発散させてしまいます。(2)は、(1)と重複するところがありますが、親や先生に叱られすぎたり、厳しくされたりしている子で、不満やストレスがたまり、反抗的になる場合。(3)は、わざと乱暴なことをして、人の目を引こうとする場合、これは下に弟妹が生まれたための退行現象としてよくみられます。(4)はこの質問に該当する子で、元気すぎる上に、小さい時から、わがままに育てられ、暴れたり、乱暴すれば、両親や祖父母などが、仕方ないと負けてしまって、その子の要求を通してきた子の場合です。相手のことや、全体のことを考えずに暴力をつかって強引に自分のやりたいことを押し通そうとする子は、気持ちのまだ幼い子です。このような子は、いつしかみんなに敬遠され、孤立してしまうこともあります。両親は、やさしく、他人の立場や、他人の要求も同じくらい大切にしなければならないことを、くり返し教えていかなければなりません。もし、少しでも我慢することができた時には、みんなでそれを認めたり、ほめたりして評価してあげることも大切です。(田口 俊雄) 9 仲間はずれをする いつも四人のグループで遊んでいますが、その中の一人をいつもいじめています。うちの子が中心になっているようなのです。その子は一人でポツンと友達の遊びを眺めています。どのように教えていったらよいのでしょうか。 幼児にとって、宝物のように大切なのが友達です。この時期に思う存分友達と遊ばないで、家に閉じこもってお母さんとだけで過ごしていると、社会性が育たないばかりか、人との交際を恐れる人にならないとも限りません。 だいたい、友達の中で人気のある子は、親が心配しなくても、友達が次々とやってきます。その子には、友達を引きつける魅力があるのです。子どもは正直なもので、魅力のあるところに集まってくるのです。 この質問のお子さんの年齢がはっきりしていませんが、多分、年中児ではないかと思います。年中児のグループは、二、三人か、三、四人が多く、六、七人でいっしょに統一をとって、共通の遊びをするのは、まだ、ちょっと無理です。つまり仲間の一人一人の気持ちを考えてやるほど、社会性が育っていないわけです。ところが三、四人で遊んでいても、いつまでも仲良く遊んでいるわけでなく、ちょっとしたことで、一人が仲間はずれにされ、泣いてしまうことがよくあります。このいじわるも「二人か、三人だけが共通の意識をもち、もう一人をボイコットする」という複雑な心理を楽しんでいる、一種の遊びなのですから、それほど気にかけることではありません。子どもは、このような仲間げんかをしながら、しだいに相手の気持ちや、立場を考えていく力が育っていくわけです。いつもわが子が中心になっていじめていると心配されますが、年中児のグループの場合、ボスといっても、その子がそれほど悪人であるはずはありません。その子がうまく遊びをリードしてくれるので、そのグループが楽しくなっているわけですし、仲間はずれにあっても、また、そのグループの仲間に入っているのをみると、それ程悲しんだり、つらがったりしているわけでもないでしょう。 お母さんが見ていて、そのいじわるや、いじめがさらに高じていくようならば、グループ全体に、「○○ちゃんも一緒に、みんな仲よく遊んであげようね」と、優しく言ってあげてください。どんな人でも、一度や二度はいじわるしたり、逆にいじめられたりした経験があることでしょう。そうした経験を通して、人間は強くなっていくのです。(田口 俊雄) 10 友達の世話をやきすぎます友達の世話をやきすぎます*年中の女の子です。一人っ子で、友達の世話をやくのがすきなようです。いつも リーダーシップをとりたがり、お姉さんになったつもりでおります。小さい子の面倒を見過ぎて時には親切オーバーのところも見られます。このままでは、友達 に嫌われないかと心配です。 一人っ子でひっこみ思案。友達がなくてポツンとしている。どうしたらいいか。といった相談はよく受けますが、この子の場合は、全く反対のケースですね。 子どもは、生れ持った性質が、決定的な要素として、その後の性格形成に作用していきます。この子の場合、外向的な要素が、一人っ子という環境によって、外部の仲間への働きかけがより積極的な子にしたのでしょう。実は、わたしも一人っ子で育ったのですが、内向型だったので、家の中で人形相手に一人何役ものセリフを言って、独り遊びを楽しむ子でした。 基本的には、黙って見守るのがベストかと思います。「もし、友達に嫌われるようなことになったら」と心配される気持ちはよくわかります。この子の長所が、裏目に出るようなことになり、自信をなくしたり、積極性がしぼんでしまったら、何よりも、悪気のない行為をして、悲しい思いをするわが子を見るのがしのびない。こういった親心は痛い程同感できます。 しかし、人間は、長所と短所は表裏一体の関係にあって、それら全ての特性を生かして生きるより方法はないのです。だから、子ども時代は、その子の良い面を親が沢山認めてやり、自信をつけてやり、「今のままでいいのだからね」という、いわば、承認をしてやるのも親の役目だろうとわたしは考えています。 子どもの社会は、大人が考えているよりきびしい面があり、相手のウソをサッと見抜く目を子ども同士が持ち合っています。もし、嫌われているような様子がみられた時、決して、親が登場して、相手方の子や親にお詫びや、まして、弁解の言葉を伝えない方が良いと思います。近所の子ども同士のトラブルをみていると、もっと、そのことで子ども同士が心の葛藤をかかえ、乗り越えた方が、本当の意味で、社会性が身につくはずなのに、双方の親があやまりごっこをしてしまい、そのために、子ども自身の成長のキッカケにならないケースが多く見られます。「強引なやり方は、あなたもされたらイヤだわね。」や、「ごめんなさいを相手に言うことは負けたことにはならないし、本当のお友達になれるキッカケになるのよ」などを、日常に、さりげなく教えておけば十分ではないでしょうか。遠くから見守るのも親の役目だと思います。(森本 邦子) 11 昆虫大好き 昆虫が大好きで、幼稚園でも、遊びに行っても、土を掘ったり、木の葉をいじったり友達と遊ぶよりも一人で昆虫を見つけています。あまりにもマイペースなので協調性のない子にならないかと心配です。 四歳から五歳にかけて、幼児は自然や社会への興味、関心が強まり、知識欲も旺盛になってきます。四季の変化が分かってきて、それにともなって現われる自然現象にも、「おや、どうしてかな」と考えながら見るようになります。「花のみつを蝶や蜂が吸うこと」「くもの巣にかかった虫がどうなるか」「水の中を泳ぐまっ黒なおたまじゃくしが、あの草の上を跳ぶかえるに変わること」などの現象や状態を見ると、いっそう激しく興味を感じます。中には、一つのことに固執して、そればかりを追い求める子もみられます。昆虫博士と呼ばれるほど、虫のことに詳しく、外に出ると庭に穴を掘って、ありの巣を探したり、ことに春から夏の季節になると、夢中で虫取りに出かけ、家に帰ってくると図鑑を引っぱり出して、自分の知っている虫の名前を調べたり、覚えたりします。そばで声をかけても上の空といった熱中ぶりに接すると、いい加減あきれるばかりか、心配にもなってきます。 これは、ことに男の子に多く、昆虫ばかりでなく、電車(ことに新幹線)、自動車(ことにF1)などスピードのあるものに力を感じるのか、夢中になる子がいます。 ご質問のお母さんは、友達とのごっこ遊びにとけこまないで、虫ばかりに興味を持つ子に、将来に向けて社会性が育たないのではないかと心配されているようですが、幼稚園での集団生活に大きな支障がなく、教室でクラスのみんなと同じように、先生の指示にしたがって行動できているのなら、特に心配する必要はないと思います。 こうした一つのことに熱中する子は、しばらくして、昆虫を卒業すると、また次の新たな興味のある対象を見つけて夢中になっていくことでしょう。 ただ、あまり友達と交わることに興味を向けない場合には、クラスの中に孤立した存在になってしまうので、同じように昆虫に興味を持っている子と仲良くなって、友達づきあいができるよう、お母さん同士が話し合ってほしいと思います。(田口 俊雄) 12 幼稚園に行きたくない 年少のときはべつに登園をいやがることもなかったのですが、最近になって幼稚園に行きたくないと言い出しました。幼稚園では親しい友達もいて、その子と一対一ならば遊べるんですが何人もの友達とは遊べません。近所に友達もなく、遊びに行ったり来たりの友達はいません。 家の中では元気な子なのですが、幼稚園や公園などではおとなしい子となってしまいます。先生からは休ませないようにと言われていますがどうしたらよいでしょうか。 登園をいやがる理由は様々ありますが園そのものに子どもにとっていやなことがある場合と本人に社会性が育っていない場合が考えられます。 実際の事例を分析してみますと園そのもののマイナス要因としては先生がこわいから、友人がいじめるからなどがあります。あるいは友人ができて自分にできない遊び、例えばくさり登りでこわい経験をしたとかブランコで大きく振れないなどがあります。あるいは、家の中にいたいという理由で下の子が生まれてから母親への甘えも強くなってということもあります。 原因は多様なものが考えられますが先生が怖いとか叱るからといってすべての子どもが怖いとかいう例は少ないのです。友人がいじめるという場合にも多くの子どもが平気で対応していることがほとんどです。例は少ないのですがきびしく叱りすぎる先生やほんとにいじわるな園児にいじめられている例も時にはあります。 幼稚園は、ほとんどの園児にとって楽しいのですが、ブランコも、すべり台も、ジャングルジムも、かけ足も友人と同程度にできない園児は、この遊びを体験しているとはいえないようです。調べてみたら幼児の生活は遊びであり、友人との遊びでは運動能力が必要なものが大変に多いのです。となると、幼稚園を楽しいものにするためには、休みの日などに公園や幼稚園でこうした遊びを十分にさせ、能力をつけることで登園を好きになった事例もたくさんあります。この時には父親の参加が効果的です。 友人がいない園は楽しくありません。親同士が友人となり、子どもも連れて行き、相手も来させて遊ばせることも効果的です。友人に来てもらうから始めて、相手の家で遊べるようにしたいものです。 休ませて、本人が行きたいというまで様子を見る方法もありますが長期となるので、種々努力して登園させ、この間に楽しい園生活になるように工夫して援助したいものです。(金子 保) 13 元気で幼稚園へ行っていたのに 年中の男の子です。幼稚園は大好きで、三歳保育の時から熱を出した時以外は元気に行っていました。明るくほ がらかな子で友達ともよく遊んでいる様子でした。ところが、下に弟が生まれてから幼稚園に行くのをいやがり、人見知りが強くなり、近所の人にもあいさつを しなくなりました。何が原因なのでしょうか。 こういった相談は、よくあるケースです。問題がなかった子が急に変化する。親にしてみれば、「エッ、なんで?もとの良い子にもどってョ」という気持ちが強く、混乱した状態になり、子どもへの対応について良策がみつからないわけです。原因をさぐるためには、まず、現在の子どもの様子を細かく観察する作業から始めましょう。第一に、登園をいやがっている時、「行きなさいね」と連れていけば、門の中へはスッと入って行くのでしょうか。「じゃあ、おウチにいる?」と、休ませると、家の中ではお母さんのあとをついてまわっているのでしょうか。第二に、近所の人に人見知りをし、あいさつすらしないのは、ほかの人達、例えば、友達の親に対しては普通の態度なのでしょうか。子どもに問題が起きている時は、現状把握を徹底的に行うこと。それを両親でやってるうちに、原因の糸口は、ほとんどみつかっていくものです。その時に、基本的な生活習慣、つまり、朝起きた時に「おはよう」と元気よく言っているか。早寝早起きをしているか。食事どきは集中して食べているか。そういった日常の生活パターンがスムーズにいっているかの点検もしてみてください。 この子が、これまで、元気に幼稚園にかよい、明るく人と交流できたのは、自分の毎日の生活に満足しているからできたのです。両親から愛されているという充足感が心の支えになっているから、「家庭」から「幼稚園」という別の場所へ楽しく出かけられ、「家族」の人以外の「他者」とくったくなく出合えたのでしょう。それが、弟の出現によって、くずれてしまったと、その子は感じとったのでしょう。両親は関心を赤ん坊に向けている。自分への愛情がつかみかねているのでしょう。まわりの人々も常に注目を下の子に向けている。この子にとって、家庭は居心地が悪く、居場所がみつからない。「ボクはここにいますよォ」というアピールのために、平然として親の顔がくもってしまうような行為をするだけのことです。 対策は、きわめて簡単。「お父さんもお母さんも、あなたのことを大切に思っているんだよ」という愛のメッセージをどのように繰り返しやっていくか。ただ、それだけのことです。(森本 邦子) 14 男の子が怖い 年中の女の子です。一人っ子のせいか男の子が怖いといって、幼稚園に行きたがりません。園のバスに乗る時も隣に男の子が座ると怖がっています。ふだん甘やかし過ぎかとも思うんですが、友達がいないので何とかしたいと思っています。 女系家族や、女の人との接触の多い家庭の中で育って、あまり男性との接触のない女の子の中には、男の人が苦手なタイプがいます。二歳前後の生活の場が広がって、周囲の人たちに関心が向いてくる頃から、いきなり男の人に抱き上げられたり、大きな太い声でからかうような話かけをされたりすると、お母さんの背中にかくれたり、悲鳴をあげたりしてしがみついて怖がる子もいます。いつも触れ合っているお父さんのように優しい声や態度でないのも、恐怖心につながってしまうのかもしれません。こうした経験が何度かあると、おとなの人だけでなく、男の子でも何かそばに寄られると、怖く、不安になるのです。 このように、男の人や、男の子に接触の少なかった女の子、怖さの記憶の残っている女の子にとって、入園直後、通園バスの隣の席に元気のいい男の子が坐って、大きな声を出したり、荒々しい動作を繰り返したりすると、幼稚園に行くのが怖くなるのです。 このような子は、まず、生活が閉鎖的でないか、男の子ばかりでなく、女の子もふくめて、対人関係、友人関係が狭く、決まった子とばかり遊んでいないかを反省してみましょう。幼稚園は、同年齢の子がひしめき合っている場所なので、その子にとって刺激が強すぎて、圧迫感を受けてしまうのです。入園する前から、お友達を増やしたり、ことに男の子のいる場所に連れ出し、少しずつ男の子の遊びに慣れさせながら、「たけしちゃんって、ずいぶん大きな声が出るんだね」とか、「みよちゃんには乱暴しないから大丈夫よ」などと、説明してあげると、だんだん納得していきます。できたら、少しおとなしい性格の男の子のお母さんとも親しくなって、自分の家へ遊びに来てもらったり、こちらからも一緒に遊びに出かけたりして、男の子との触れ合いを広げていくように心がけましょう。ことに、一人っ子の場合は、家庭でもその子中心の扱いや、優先されることが多く、必要以上に親が神経過敏な言葉かけや、過保護な育て方をしやすいので、少しずつ、生活的経験、社会的経験を増やして、対人的な自信につなげていくように心がけてほしいと思います。(田口 俊雄) 15 集団生活になじめない 年中の男子ですが集団生活になじめず、幼稚園に行きたくないと言います。神経質で友だちの中に入っていきま せん。クラスの中のやさしい男の子と仲良しになったのですが、その子がいないとなにか不安そうな表情を示し、落ち着いていられない状態となってしまいま す。小さい頃から近所に友達もいないし、わたしも友人がいないので、近所の人とのつきあいがほとんどなくよその家との行き来もありません。テレビが好きで すし、ビデオもよく見ます。ファミコンも大好きですがどうしたらよいでしょう。 人間の各種の能力は経験によって育つことが多く、子どもは友人を求め、友人との遊びが好きなのですがこの経験がなかったり、友人との接触でいやな体験をしたりしますと、友人をさけるようになったり、きらいにもなります。無理に友人と遊ぶように指示しても楽しく遊ぶことはできないのです。 子どもも、大人もそうですが友人と楽しく時間を過ごしたり、遊んだりすることは、互いになにかをして過ごすのです。話し合いをしたり、遊具を用いたりして遊ぶのですが、この場合にはその遊ぶ能力を持っていることが必要です。ジャングルジムで遊ぶには、上に登って歩けないと遊べないのです。トランプにしてもカルタにしても同じです。 人間には様々な能力がありますが数や文字などの学習能力、社会性の能力などを考える時に、友人達との体験が必要となりますので、この時期に社会性を伸ばすことはとても大切です。三つ子の魂百までもと言われる中心的な能力と思います。 運動遊具での遊び、ボールけり、ボール取り、ブランコ、すべり台、おにごっこなどを体験し、外遊びの能力を身につけることが大切です。お母さんが困難ならば父親の出番です。父親は多忙であるとか、早く帰宅できないとか、育児は母親の仕事であるとかと育児を母親に押しつけていては困ります。 こうして運動能力を身につけますと、友人との遊びに自信がついてきます。友人のさそいに従おうかなという気持ちが出てきます。そして遊んでみると同じようにできたりして楽しくなるという体験が社会性へと育っていくのです。そして集団での遊びが楽しくなり、みんなの中で生活できるのです。(金子 保)16 社会性が乏しい 五歳の男子。幼稚園でも進んで遊びや集団の中に入っていけません。一人でブランコに乗ったり、玩具でひとりごとを言ったりして遊んでいます。家ではお手伝いをよくするし、近所の友達とも元気よく遊んでいます。どうしたら、みんなの中に入っていけるでしょう。社会性が乏しいのではないでしょうか。 同じ兄弟や姉妹でも、それぞれが別々な個性をもっています。同じ両親のもとで、同じ環境に育っても、それぞれ異った性格や個性を示すものです。 泣きやすい子、めったに泣かない子。手のかからない子、手のかかる子。動作のおそい子、敏捷な子。引込み思案で内気な子、明るく社交的な子。無口な子、お喋りな子。行動が粗野で乱暴な子、もの静かで優しい子。感の鋭い子、鈍い子。いろいろなタイプの子がいます。 幼稚園児は発育途上の著しい時期であり、かつ三歳・四歳・五歳とそれぞれの発達の程度の違いがはっきりしている時期です。 お母さんは自分の子どもの社会性のことを大変に気にしているようですが、それぞれの年齢的な発達と、個性の違い、環境に対する適応性などについても配慮して考えてみましょう。 三歳では、ようやく親子分離ができるようになり、母親の後追いも少なくなり、また人見知りも消失しはじめます。同年齢の子どもとは、一定時間なら一緒に過ごすことができます。 四歳~五歳では、多くの子どもは、幼稚園などの集団の場合への参加の機会が多くなり、ほかの子どもと接触することによって、社会性を身につけていくのです。 ほかの子どもは、それぞれの親たちの独自の育児法で育ったのであり、自我が萠出する時期が別々ですから、子ども達同士で、お互いに自我を丸出しにして、ぶつかりあうのです。 幼稚園では、ある程度の自律性と自主性の育成を要求するのですから、その方針のなかで、社会性を育てなければならない時期に到達したのです。新しい人間関係をつくり、相手に譲りあうことや、がまんすることなどを、わが家と異なったルールを身に付けるのです。 お母さん、少し時間をおいて、ゆっくりと、わが子を見守ってください。(森 彪) 17 人見知りがはげしい 年長の男の子です。おとなしくて内気な上、人見知りが激しくて友達ができません。幼稚園では担任の先生の後を付け回っているようです。先生と一緒でなければ何もできないと言われています。休みの日は父親と遊んでいます。どんな指導が必要なのでしょうか。 お子さんは家庭でお父さんと遊んでいるようですが、それも大切な経験です。しかし時には友達を家に呼んで遊ばせてください。子どもにとって家で友達と遊ぶことは、自分の土俵で相撲をとる力士にも似て心強いものです。始めはそれぞれの子が好きなことをして遊んでいます。そのうち必ず相手のやることに興味を持ち始めます。けんかが起こるかもしれませんが、それが友達遊びの始まりです。家の中で友達と遊べるようになったら、ほかの家に武者修業に出すのもいいでしょう。 とかく大人の多い家庭の中で育った子どもは俗にいう「内弁慶」になる傾向があります。家では威張っているくせに、外に出ると小さくなってしまうのです。家庭内では結構活発に振る舞っている子どもが一歩外に出ると、すっかり内気な子に変身してしまいます。大人の多い家庭の中では、大人と交わる経験ができても、同じ年頃の子どもと遊ぶことが少ないため、子どもの中に入ると臆病になるのです。 最近特に地域によっては同じ年頃の子どもがいないので、幼稚園こそ子どもにとって友達と遊べる嬉しい場所なのです。園生活で自分を出し切って遊べるようになったら、しめたものです。子どもがそこまで育つにはそれなりのプロセスが必要です。お宅のお子さんが先生と一緒に行動することができるのは幸いです。 子どもは先生と安心して園生活を過ごすようになると、やがて集団の中で安定して遊べるようになります。 お子さんは年長組に所属しているということですから、幼稚園に年中から入園したとしても一年以上は経っているわけです。馴れるのに少し時間がかかり過ぎるといったご心配があるかもしれませんが、集団生活への適応状態は個人差が大きいのです。気長に見守ってやってください。お宅のお子さんも必ず友達と遊ぶことが好きになります。(立川多恵子)18 友達ができるか心配です 来年小学校に入学する男の子です。おとなしくのんびりしていて、話も進んでする方ではありません。家では弟と喧嘩をしたり元気があるのに、幼稚園では誘われるのを待っている状態です。もう少し友達の中に飛び込んでいってほしいのですが。小学校へ入ってからもいつ友達ができるか心配です。 幼稚園にかよう年齢の子を持つ人で、友達がいない我が子のことで悩んでいる人はとても多いようです。 でも、何故、友達がいないことを、それ程までに悩まれるのか、正直にいって、わたしは理解に苦しむのです。子どもには、人に気軽にものを言い、すぐに交流しようとするタイプと、じっと観察はするが、自分からアタックはしないというタイプとの二種類がある以上、そのことでヤキモキしても始まらないのではないでしょうか。子どもの立場から言えば、一人でポツンとしていることで淋しさや悲しさをうんと感じてはいないのですから、親の方でなんとかしてあげなくちゃと、付き合いたくない親とも無理に話しこんで仲間入りをし、子どもの友達相手を探す必要なんか全くありません。友達づくりは、子ども自身で探させましょう。 実は、何を隠くそう、わたしも幼稚園時代は泣き虫で人見知りをし、友達なんか一人もなく、いつも部屋のすみっこにポツンとしている子でした。一人っ子だったので、家へ帰ってからも、誰かの家へ行くこともなく、たまに、近所の大きなお姉さんの学校ごっこの生徒の役に誘われるとシブシブ出かけるくらいで、家の中で何人(?)もの人形相手に独り言をしゃべり遊んでいる子でした。そんなわたしに対して、明朗活発な母は、はがゆい思いもしたでしょうが、いっさい何も言わないで、毎日のように絵本を読み、お買物に連れていき、遠まわりして道端の草や花を摘み、名前を教えてくれました。父は「女の子だからといって、モジモジして言わなければならないときも隠れたりするのはよくない子だよ。先生のおっしゃることは、みんな聞きもらしたらいけないし、お答しなさいと言われた時は大きな声でハキハキ言える子にならなければいけないよ」といつも言い、自分の思いや考えは常にまとめておいて、いつでも言葉で言えるようにしておくのが良い子なのだと、わたしをひざに乗せながら言っていたのを「うん、うん」とうなずきながら聞いていたのを覚えています。人間は一人で孤立して生きてはいけない生き物であること、人との交流が楽しいことを親が態度で見せるより方法はないとわたしは思います。(森本 邦子) 19 内気でおとなしく元気がない 内気でおとなしく、いつも独りぼっちでいます。友達ともあまり遊ばないし、自分から友達の中へ入っていくこともしません。元気な子にするにはどうしたらよいでしょうか。 子どもというのは、心身ともに急速に成長するわけですから、本来、おとなしくしていることが苦手で、例外なく元気で活発なはずです。入園期に達する頃になると、当然一人遊びでは物足りなくて、友達を求めたくなります。ところが、その反対になんとなくおとなしくて元気がなく、家の中に閉じこもって、テレビを見たり、本を読んだり、玩具をいじったりして、一人遊びを好む子がいます。幼児教育センターへもこうした質問が多いことから、最近ふえてきている子どものタイプと考えてよいでしょう。 このような子は、神経が細く、ちょっとした友達との争いごとでも傷つきやすい子、家に人手があって、おとながその子のいいなりになって遊んでやる家庭の子、お母さんが子どもの遊びに必要以上に干渉し、「これはあぶない!」「それはきたない」と神経をとがらせている子、わがままで友達と一緒では思い通りになれないから、それがいやな子、みんなよりスローペースで集団遊びやスポーツが苦手な子、小さい時から本やテレビを見て、家の中で過ごす癖のついている子などの理由があるようです。さらに共通しているのは、お母さん自身も社交べたで、ほかのお母さんとの交流を面倒がったり、避ける傾向があるようです。 そこで、こうした子をもつお母さんは、今までの扱い方を反省し、できるだけ友達と遊ぶチャンスをつくってやりましょう。いきなり外へ出られない子には、家に呼ぶなり、近所の遊び場についていって、子ども達の仲間入りをさせましょう。そして、やっと友達ができても、いつもお母さんがそばで「ああだ、こうだ」と子どもたちの遊びに干渉したのでは、なんにもならないので、きたない、危いと心の中でハラハラしても、ほうっておくこと。ときには、泣かされることだってあります。遊び方を知らない子が、お母さんに訴えてきても、泣いても、いちいち取り上げずに、また友達の中へ返すように励ましてほしいのです。 もし、近所に遊び相手がいないときには、あきらめずに、幼稚園の母の会などで、同じような子をもつお母さんを探して、お母さん同士の交流から、子どもを友達にしていくくふうをしてあげましょう。(田口 俊雄) 20 とてもはずかしがりやです 年長の女の子です。幼稚園では何でもよくできて、先生にほめられるのに、母親の前ではぐずぐずしたり、見ていられないほどはずかしがったりするので、ついしゃくにさわって叱ったり注意をしてしまいます。このまま放っておいてよいのでしょうか。 幼稚園では何でもよくできて、先生にほめられる、いわゆる良い子が、家庭にいる時は、そうではないような態度をとる。これは、よくあるケースです。 「集団になじめない」「友達ができにくい」「短気」「落ち着かない」などの相談の時には、「そういう方がお身内にいらっしゃいますか」と聞くことにしています。たいていは「はい、小さいときはわたしがそうでした」「短気なのは主人にそっくりです」などの返事が返ってきます。遺伝子かモデリング(お手本)です。親にある傾向や、長所や短所はその子どもの心を察することができる目安になります。そんな時、「どんな時にみんなと一緒にできたか、親にどう手を貸してもらいたかったか、どんな時に楽しかったか」思い出してやってみてください。すぐに溶け込めなくとも「少しでも遊べたね。」とできたところを認めて、ほめ、ねぎらってあげてください。そして、「だんだんみんなと一緒にやりたくなるよ」と暗示を繰り返し与えてください。 基本的にこの子は、意志的で努力型なのでしょう。先生にほめられる状態の自分を維持していくには、大変なエネルギーが要ります。目も耳もフル可動させて、注意を集中させ、指示されたことを行動に移し、作業は根気よくやり続けるのでしょう。ちょっと、大変なことも、ほかの子がサボったり、なまけてやらないことも、積極的にやろうとしているのかもしれません。 そうすることで、できなかったことができるようになり、分らなかったことが分るようになり、日々、進化していく自分に充足感を抱く、とても、自立的に生きようとしている子なのです。こういったタイプの子は、心と身体の中にたまる疲れやストレスを、どこかで発散させる必要にせまられるわけです。すると、心を休め、依存が許される場所である家庭に帰った時は、身近にいて、一番甘えられる母親に、自分のだらしのない状態をさらすことで解消させているのです。ぐずぐずするのは甘えたくてやっているのです。「ホラ、さっさとしなさいよ」と手助けされながらかまってもらいたいのです。また、恥しがるのは、もともとナイーブな面があって、人のうしろに隠れていたい面も、幼稚園では、「エイッ」と気合を入れて消極的な面をふきとばしている分、母親のそばにいる時は甘えて、心のバランスをとっているのではないでしょうか。親のとるべき態度ってむずかしいものですね。ついしゃくにさわるという感情は、わたしも二人の子を育てて、沢山体験しました。能力的には正常に発達成長している上等の子なのですから、気持ちに余裕を持つようにして、叱ったりせず、優しくかばってあげてください。(森本 邦子) 21 いつも独りぼっちです 四歳の女の子です。集団生活になじめません。幼稚園でもみんなと一緒にお遊 戯や遊びのときに輪の中に入れないのが心配です。うちの子だけがみんなと違うことをしていると気になって将来を考えてしまいます。小さい時から一人遊びば かりで、わたしもよその子とあまり遊ばせませんでした。それが原因なのでしょうか。 集団になじめない」「友達ができにくい」「短気」「落ち着かない」などの相談の時には、「そういう方がお身内にいらっしゃいますか」と聞くことにしています。たいていは「はい、小さいときはわたしがそうでした」「短気なのは主人にそっくりです」などの返事が返ってきます。遺伝子かモデリング(お手本)です。親にある傾向や、長所や短所はその子どもの心を察することができる目安になります。そんな時、「どんな時にみんなと一緒にできたか、親にどう手を貸してもらいたかったか、どんな時に楽しかったか」思い出してやってみてください。すぐに溶け込めなくとも「少しでも遊べたね。」とできたところを認めて、ほめ、ねぎらってあげてください。そして、「だんだんみんなと一緒にやりたくなるよ」と暗示を繰り返し与えてください。 そしてみんなと仲良くなる言葉「ありがとう!わかった!ごめんね!」を家で練習してください。「おはよう!さようなら!」のあいさつも大事です。集団に溶け込める子は家でもちゃんとあいさつしています。両親が互いにあいさつできている家庭には、集団に溶け込めない子は少ないようです。ごあいさつができたら、相性のよい子を少人数、家に呼んできて遊ばせてみましょう。親子一緒にゲームをしたり、遊びをしてみることもよいでしょう。子ども同士互いに一緒に遊ばない時はそのまま勝手にそれぞれ好きにさせておきましょう。だれかと一緒に同じ場所にいるという経験を重ねていくだけでもよいです。 また、帰った後に親が「あの子はこれができてあなたはできなかった」「あの子はちゃんと片付けなかった、いけないね」などの非難はしないこと。親が他人の評価や悪口をいうと子どもは自分も同じように親から言われはしないか、他人から言われはしないか、と人の目を意識してしまいます。また、せっかく遊びに来た友達に対してマイナスの先入観が植えられて、仲良く遊べない気持ちを作ってしまいます。幼稚園や集団生活に馴染むには、普段の少人数の時での遊びでウォーミングアップしておきましょう。その際お母さんも、母親同士の輪の中にできるだけ入るようにしてみましょう。子どもはお母さんの人付き合いをみています。(関 輝男)22 自己主張ができるようにしたい五歳で幼稚園の年長組です。性格は明るく、みんなと仲良く遊んでいます。友達にいろいろ命令されるとその誘いにのってしまいます。ときには「イヤ」と自己主張をしてもよいのではないかと思っています。個性的で、自己主張のできる子に育てたいのです。どうしたらよいでしょうか。 性格が明るく、社会性に富んでいる五歳児ですね。これも本人が持っている特性であり、個性ですから、喜ばしいことではありませんか。 これからは個性が尊重される時代です。体力や知性が秀でていることはすばらしいことで、性格が明るく、柔和な人は、みんなから好かれ、友人が沢山できるのは立派な特性です。 自己主張ができる人になることを望んでいるようですが、主義主張するには、自分の立場、地位、能力、実力のほかに、場所とタイミングが必要です。このような状況を、子ども達は遊びを通して、自然に身につけていき、自分のものにするのです。お母さんは余りにも心配し過ぎではありませんか。もう少し様子を見守ってはどうでしょうか。 幼児の能力を伸ばすお母さんとは、どんなタイプでしょう。 子どもの長所・短所をよく知っている。子どもの長所をほめ、励ますが、短所は口にすることは少ない。子どもの能力以上のことを要求しないで、自然体でいく。子どもが感激したこと、お話ししたがっていることをしっかりと聞いてやる。子どもがやろうとしているとき、中途で当惑しているとき、すぐに口や手を出さない。子どもには叱咤激励は有効でありません。子どもへの過干渉・過保護のダメの連発は止めましょう。自分の子とよその子との比較をしない。お母さんは明るく、楽観的である。両親は仲良く、子どもの前では口論をしない。 お母さんは人生の経験者ですから、子どものやろうとすることもわかってしまいます。それをじっと我慢して見守る態度が大切です。(森 彪) 23 お話が聞けない 五歳の女の子、姉は小学校二年生、弟は二歳です。幼稚園でもお話が聞けなく、すぐあきてしまいます。家でも真面目な話や大事な話になると体を動かしたり、きょろきょろしたりして聞こうとしません。 子どもは10分もなかなかじっとはできません。もしいつもできたら、体の調子が悪いか落ち込んでいる時です。お子さんがじっとできない状況はありませんか? お母さんの話はくどくありませんか。子どもは緊張を長時間続けることはできません。長くしゃべることは強調点が多くなり効果的ではないのです。「人の話はちゃんと聞きましょう」という抽象的な言い方より、「大事なお話はお膝に手を置いて聞くとよく分かるよ」の方が具体的でいいでしょう。また「他人に迷惑をかけないようにね」より、「お友達がやめてと言って嫌がっていたらそれ以上したらだめよ」と言いましょう。 話し方はあくまでゆっくりと、しゃべりに「」「」を入れましょう。「間」が入ると説得力が増します。早口を聞いている人は疲れます。それが文句であれば、なお聞きたくなくて受け流してしまいます。聴く気にならなければ、ほかに気がいきます。早口は分かってもらいたいという気持ちが全面に出てしまって、子どもには押しつけがましくなり、怒られている感じもするのです。早口で話すと気が急いで、しゃべった割には大事なところが抜けます。 言ったということと分ったということは違います。相手に分るような話し方でなければ「労多くして益なし」です。一方的にならないことが上手な伝え方のこつです。 また、お子さんがもたもた話をしても、ゆっくりと聞いてあげましょう。子どもの話を最後まで聞かないで話をとってしまうと、子どもは言いたいことをぐっとつまらせ、いらいらして、その分体を動かして不満を表現します。それを「ちゃんと聞きなさい」と、その子どもが落ち着かない態度まで非難して、それまで説教の教材にすると「もう親の話は聞いても面白くない、文句か、強制か、お説教だ」と思って乗ってこなくなります。 「話は短く、できたらほめる。ゆっくり間を入れる。」ことがこつです。さらに「どうやったらみんなと仲良くなれるかな」「何を一番やってみたい」などと子どものやりたいこと、希望、いちばん興味のあることについて、たえず対話を心がけていると子どもは目を輝かせて一生懸命話します。その時は集中しています。その後で話すのです。(関 輝夫) 24 思っていることがはっきり言えない 自分の思っていることをはっきりと言えません。質問されても単語を並べたような言い方をするのです。大人からの質問に特にこの傾向が強いのです。家では普通に話をしますし、特に遅れているとは思いません。 人間は、子どもでも大人でも感情が緊張や興奮している時と平静に落ちついている時とでは表現能力にも大きな違いが現われます。わたし達大人でも大勢の前で、まとまった話を求められると緊張し、思い出せなくなったり、予定しないことを口にしてしまったりもします。これはみな異常興奮のためなのです。中・高校生が上級学校への受験の時にも、テスト会場では興奮し、力を十分に出すことはできなくなるものです。 ご質問のお子さんはよその家に行った時や幼稚園で先生や友人に質問されたりしてこの異常緊張を示して会話が普通の時とはちがって単語を並べたようになってしまうのです。これをなくすには、経験を重ねることが最も効果的な方法と思います。友人や大人との会話で、最も緊張しない場所は自分の家ですから、お母さん、お父さんの友人に来てもらい、馴れてきたら話しかけてもらい、会話経験をしたいのです。子どもを連れての来訪ができれば、自分の家で大いに遊ばせたいものです。もちろん、この時に、普通に話すのよ、などの注意をしてはいけません。遊ばせておけば良いのです。幼稚園の親の会などで友人をつくってください。 会話、遊びが馴れてきたら、相手の家に行かせてもらったり、大人の話しかけによる会話体験もさせたりしたいものです。事情を話して、協力してもらうのが一番良いと思います。友人の家に行って緊張し、単語会話になっても時間がたてば徐々に普通会話になるものです。友人の家に行った時も友人と遊べとか、話をするように、との指示や注意はしないことです。 徐々に馴れさせる方法ですが社会性というものは、本人は普通に話せるように、友人とも遊べるようになどの願いは持っているのに、そのように行動できないのですからあせらないで、時間をかけてください。それと、友人との会話、遊びの少ない子は一般的には、遊びでの技術が未熟であったり、運動能力が劣ることが多いので、公園などでジャングルジム、ブランコ、すべり台、ボールけり、ボール取りなどの体験を、できれば父親との遊びで経験したいものです。このような経験の中で家の外でも、家と同様に行動できるようになるのです。(金子 保) 25 片付けができない一人っ子で片付けがうまくできません。母親と一緒だと何とかできるのですが、一人ではだめなんです。「あなたは厳しくしないからやらないのよ」と、友達のお母さんに言われます。区分けして片付けることを今教えているのですが、厳しくした方がよいのでしょうか。 幼児は散らかし名人で、片付けは大の苦手です。これは、幼児が先の見通しを立てて行動する洞察的な思考力が十分に育っていないので、うまく段取りをきめて遊べないためです。そして、いつの間にか部屋中いろいろなものが散乱し、収拾がつかなくなってしまうのです。また、幼児はいつも次のこと、新しいことに興味が広がり、すんでしまったものに魅力を感じないことも、散らかし屋さんになってしまう理由の一つといえましょう。 では、この散らかした遊び道具の片付けは、どうしつけていったらよいでしょうか。 大声を出して「片付けなさい!」を繰り返したり、「捨てちゃうわよ」と、おどしたり、叱ったりして、結局お母さんが代わりに片付けている家庭が多くみられますが、これでは自主性は育ちません。年齢によっても、その扱いは違うでしょうが、まず、散らかしたというのは、それだけよく遊んだわけなので、「よく遊んだわね」と認めた上で、二~三歳児なら一緒に手伝ってあげながら、「これはどこへしまうの?」と聞き、少しずつ自分の力で片付けていくように導くことです。四歳児以上でも「さあ、そろそろお買物に行くから、タイマーが鳴ったら片付けてね」などと予告しておくとか、「お母さんが洗濯物を取り入れるから競争しよう」など、片付けごっこのように遊びの展開で誘導するなど工夫してみると効果があります。そして、多少の片付け残しがあっても、ガミガミ小言を言うのでなく、「あれ、この絵本とこの積み木さんが残ってさびしがっているわ」と指摘し、うまく片付けができたら、「わぁ!きれいになったね」とその努力を認めてあげることです。幼児でも自分が持ち出したもの、使ったものを自分で片付けた時の気持ちよさは当然あるわけなので、認められれば嬉しく、また片付けようという気持ちを持つでしょう。また、最近の子ども達は、玩具を与えられすぎていることも、片付け下手の子を生んでいる理由の一つです。もう興味のなくなったものまで、玩具箱に突っ込んであるのをよく見かけます。一~二カ月に一度は、子どもと一緒に相談して、整理をし、いらないものは捨てるなり、しまっておく習慣もつけたいものです。(田口 俊雄)26 動作がゆっくり うちの子は優しくてよい子なのですが、のんびりやで、着替えや片付けばかりでなく、食事の時でもやることがゆっくりしているので、つい「のろま…」と怒鳴ってしまいます。急がせない方がよいのでしょうか。 現代社会のようにとかく人々がせっかちになっている時代には「のんびりや」の存在は貴重ではないかと思います。しかし親にしてみると、うちの子だけこんなにのんびりしていてはみんなに置いて行かれるのではないかと心配になります。先日お母さんたちの口癖についてアンケート調査をしました。集計して一番多かったのは「早く、早く」という言葉です。母親はとにかくせっかちなのです。次が「だめ、だめ」という言葉です。とかく母親は自分の都合で子どもの行動を規制する傾向が強いようです。 きっとお宅のお子さんもこれまでお母さんに随分「早く、早く」と言われてきたと思います。しかしお母さんがいくら言葉でせかせても行動は早くならないのです。それはなぜでしょう。行動の遅い人の中には不器用な人もいますが、動作がゆっくりしているからといって生まれつき不器用だと決めつけないでください。子どもたちを見ていると、一人っ子や長男長女にのんびりやが多いようです。どうも可愛がられて育てられた子どもにのんびりやが多いようです。一人っ子や長子は生まれた時から大人の中で育てられ、競争相手もなく、安心して自分なりに行動することができたので、のんびりしていられるのです。いわゆるマイペースの生活が可能だったわけです。たしかにのんびりやは性格も穏やかです。それはむしろ長所といえましょう。今はのんびりして見えても能力がそなわっていれば、必要な時には実力が発揮できるものです。お母さん!ゆとりを持ってお宅ののんびりやさんと付き合ってみてはいかがですか、子育てが楽しくなると、怒鳴らないで見守ることのできるお母さんの心のゆとりが生まれるのではないでしょうか。(立川多恵子) 27 手先が不器用です 五歳の男子、幼稚園の年長組です。絵を描いてもものにならず、人の顔を上手に描けません。粘土細工でもただ 粘土をちぎってばかりです。ほかの子は家の形を作ったり、お花の形を作ったりしています。思わず「下手ねェ」と言ってしまいます。最近では、自分で描くこ とを止めてしまい、「お姉ちゃん、描いて」とねだってしまいます。どうしたらよいでしょう。 子どもの成長発達は、同じ環境で育っても、兄弟姉妹がそれぞれ別々の個性や能力をあらわすように、一人一人がまちまちです。 母子健康手帳をそれぞれ開いてみましょう。みんなの違いがよくわかります。 子どもの能力、器用や不器用、口数が多い・少ない、もの覚えが早い・遅いなどそれぞれ別々な違いがみられます。これが個性というものです。 この五歳の子は、「お姉ちゃん、描いて」と意志表示をはっきりと言えるのですから、正常の知的発達とことばの発達を示しているといえます。 お母さんが「下手ねェ」と慨嘆することばを出してしまってはイケマセン。この気持ちを抑えて、「あら、今日は上手に描けたじゃない。また描いてね」というほめことばと励ましのことばは、子どもに勇気づけと、意欲をわかせるものです。 この子どもの短所を指摘するよりも、長所をまず見出すことが大切です。ましてやほかの子との比較は止めるようにしたいものです。 幼児が絵を描けるようになるには、手の器用・不器用さだけではありません。幼児が自分で見たもののイメージを記憶に残し、そのイメージに基づいて絵に描くのです。 幼児は野外に出て写生はまだまだできがたいのです。むしろ過去に経験したもの、テレビや絵本で何回も見たものは記憶に残り、自分のイメージにして描くのです。 人の顔を描くにも、目・鼻・口のバランスはなかなかとれませんから、それぞれの位置関係が、うまく整っておりません。まゆ毛や耳などはしばしば欠けています。 幼児が絵を描くときは気分が非常によく、安定しているときですから、そばから口出しすることは止めましょう。 子どもの自発性を大切にしていきましょう。親の我慢が大切です。(森 彪)28 食事に時間がかかる 食事に時間がかかるのですが、時間を制限した方がよいでしょうか。うちの子は食が細く体力がないので、しっかり食べさせたいのですが、わたしがその場を離れると、ほかのことに興味が移ってしまいます。朝食もほとんど食べないで幼稚園に行きます。 子どもが一日三度の食事を摂るようになるのは、家庭教育によるところが大きいのです。 しかし個人差が大きくて、体の小さい子の中には少食な子がいて、一度の食事だけで必要な栄養を摂取することができない場合もあります。そこでおやつを与えて、一日の必要量を満たしています。しかしそれでもわずかしか食べてくれない子どもがいて、母親としてはこんな少食で大きくなれるのかと心配になります。そのため親は時間をかけて、少しでも余計に食べさせようとするのです。その結果子どもは四六時中食事をさせられているようで、食事に興味が持てなくなります。楽しいはずの食事に興味がなくなったのは最近の子どもの傾向だと言われていますが、物の豊富な時代の困った現象の一つなのでしょう。たしかに食事の時間がやたらに長くならないように限る必要もあります。子どもの様子を見ていて適当な時間で切って片付けてしまうこともお勧めします。何時もと違って母親にさっさとしまわれるとあわてて食べる子どももいます。また反対に片付けられてホットする子もいるでしよう。 子どもによって一人一人必要量がちがいます。親が勝手に量を決めてそれを押し付けるのは困ります。体の小さい子が少食なのは必要がないからです。しかしそんな子どもに限って親は少しでも多く食べて早く大きくなって欲しいと願います。無理に食べさせようとしないで、食欲が出るように子どもの生活自体を変えていく工夫をしたいものです。そのため遊びを活発にすることが大切ですが、生活は一朝一夕に変えるわけにはいきません。戸外遊びを十分に取り入れるなど、母親も一緒になって生活を改善していくと食欲が出てくることもあります。お腹がすけば食事が楽しくなってくるでしょう。(立川多恵子) 29 偏食がひどく好き嫌いがある 年中の女の子です。 偏食がひどく、全体的に少食で体重もあまり増えません。おなかがすくと食べるのですが、一人で食べるのは一口か二口で時間もかかります。おやつは自由に与えています。自分で食べるように仕向けるにはどうしたらよいでしょうか。 食べものの好き嫌いや、多く食べられないということは、生まれつきの体質というのがあるかもしれません。だから、嫌いなものを栄養価が高いからと無理じいしたりして「もうちょっと食べなさい」と、量を強制するのは、子どもには苦痛でしょう。 だからといって、放っておくわけにはいかないのが親の立場でしょうし、体力の基礎づくりの幼児期の食事をスムーズにいかせることは大切なことです。 なんといっても、食事どきの環境づくりが決め手だと、わたしは思うのです。人間の快楽の一つである食欲について、人から、強制やコントロールがあっては、その子の生きる意欲をうばうことにもなりかねません。まず、親の方がリラックスしてかまえましょうね。 わたし自身も、遠い昔の幼稚園時代は、少食でやせていて、病気ばかりしている子でした。それがすっかり変わるチャンスがあったのです。太平洋戦争が始まり、三年生の時に田舎へ疎開して、石ころの道を走り回り、都会育ちで眠らされていた野生が芽生えてきて、食欲モリモリの子になりました。最大の要因は、忙しい生活になった母は、もうわたしの食事の量なんか、かまっていられなくなりました。食事どきには「さあ、食べなさいね」という母のまなざしを感じなくなったわたしは、気楽に好きなだけ食べ、それが結果として、何でもムシャムシャ食べ、病気もしない子に変身していくきっかけになったのではないかと今にして思うのです。 食事どきの環境づくりとは、楽しい話題で、一日で一番楽しいのが食事どきだと思わせるような雰囲気を作ることです。叱ったりすることは、別の時間にしましょう。家族揃って食べるというのを原則にしてお父さんには、いろいろと、ちょっとしたことでもほめてもらうようにしたらどうでしょうか。「幼稚園ではもうすぐ○○があるね。がんばってやるんだよ。この頃は朝も起こされなくても自分ひとりで起きられるようになったのだって」と、いった何気ないことを言われても、自分が大きくなることを父親が喜んでくれるというのを感じとって、嬉しい気分になるでしょう。それと、「お母さんが作ってくれたもの世界一美味しいなあ」と思わせるための作戦として、食事作りを買い物の段階から参加されるのも効果的ですよ。(森本 邦子) 30 特定の子を独占したがる 四歳の男の子です。一人っ子でわがままに育てたせいか、特定の子どもを独占したがり、相手の子が泣いていることがあります。多くの友達と仲良く遊ぶように話しているのですが、なかなかうまくいきません。どう育てたらよいでしょう。 ご家庭にお子さんを思い通りに支配し、少しでもこちらの考えと違う行動をとると、すぐ制限する方がいないでしょうか。可愛いが故に子どもの自主性や、自発性を奪ってしまいます。ほめるよりはいつも口出し、注意、文句等の干渉が多いはずです。 子どもも同じように友達に干渉します。相手は、親の言いなりになっている自分と同じように、はっきり「嫌だ!」と言えないおとなしい子、強く言えば抵抗できない子を選ぶのです。 「こっちにちゃんとシャベルを置きな!」「だめ!そんなことしちゃ!」「そっちにいかないの!」等と相手の子を制限する内容は、日頃家の中で親にやられていることではないですか。そうだったら、「嫌なら嫌といっていいよ」「お母さん達に言いたいことがあったら、いつでも言っていいよ」と本人の気持ちや、本音を聞いて、ストレスを解消してあげましょう。 幼稚園でそんな傾向があったら、先生方は気付いて、よくやってくださいます。先生方は上手に「好きなのはいいけれど、人が嫌がったらしつこくやらないのがルールよ」と教えます。また、家の周りだったら、お母さんが「ルールが守れなければ遊びには連れていけないよ、守れるかな?」と確認して約束させた上で遊ばせましょう。慣れるまではお母さんもそばで見て、そういうことをしたら、相手のお母さんにも遠慮なく注意してもらいましょう。社会に育ててもらということもあります。 その後で家に帰った時に、さっき注意をされたことの再確認をしましょう。そして、約束が守れて、お友達と上手に遊べたら、家族みんなでほめてあげてください。少しでも努力したり、しつこくしなかったらほめてあげるのです。 遊ぶ前に言い聞かし、確認し、できたところを認めてあげることです。 決まった子としか遊ばないのは、たくさんの子と遊ぶのが苦手な子です。親しいグループがあれば入れてもらって練習しましょう。また、スイミングクラブや、スポーツクラブに入って集団行動を学ぶことも有効です。なお普段から家で大人と遊ぶ時には、子どもだからと勝負事に手心を加えたり、子どもに有利なルールにしないで、対等なルールで行いましょう。遊びの中からルールを覚えていかせるのです。(関 輝夫)31 母親を独占したがる四歳の女子。弟が生まれてから母親にぴったりと寄りそうようになりました。テレビを見る時も、絵本を見る時も、いつも母親がいないと気がすみません。母親の姿が見えなくなると「ママ、ママ」と泣きながら母親を探します。ほかの子と比べて、幼稚なのでしょうか。 子どもは、自分の両親から信頼され、自分だけが愛されているものと信じています。母親が妊娠をして、大きなお腹をしているあいだは、こんど弟や妹が生まれてくるということは母親たちから聞かされて、漠然と意識しているものです。 「こんど赤ちゃんが生れるよ」と口にするのですが、その状態が自分に、どのような影響をおよぼすのかは、予測も実感もないのです。 赤ちゃんが生れて、お母さんは赤ちゃんの世話やおむつの交換などで大わらわです。 四歳のお姉ちゃんとのかかわりあいの時間がぐうんと減ってしまいました。 赤ちゃんの睡眠中に、本を読んで、親と娘とが楽しく、二人の世界であったのが、赤ちゃんが目覚めて泣きだすと、母親はすぐに赤ちゃんの世話に取りかかります。 母親から突き放されたお姉ちゃんは、孤独感におちいり、わびしくかつ不安感がわいてくるのです。いままで順調に発育した状態に、ゆがみと退行性があらわれてくるのです。 この退行性の状態を“赤ちゃん返り”といいます。 正常に発達した年長の兄弟が、年下の子が生れて、母親がこの年下の赤ん坊の育児に専念するとき、自分も年下の子のようにしてもらいたいという願望と、孤独でわびしいという感情など、情動が不安定になり、赤ちゃんのようにお母さんに元のように愛してもらいたいという、きわめて人間的な愛情の表現のひとつです。 こんなとき、お姉ちゃんも赤ちゃんと同様に、しっかりと抱きながら、かつてのような仕草で話し合ってください。娘の心は次第にやわらぎ、間もなくこの“赤ちゃん返り”は治ります。(森 彪) 32 兄弟喧嘩がはげしい 二人兄弟で兄が五歳で弟は四歳の年子です。最近兄が乱暴になって弟をいじめ ます。注意したり叱ったりすると泣き叫んだりかえって激しくなります。最後には父親が怒ってごつんとやると治まります。今はいいのですがこの先心配です。 わたしは女姉妹で育ったので男の子の喧嘩が上手にさばけません。 貸したミニカーを返せ、返さない程度の兄弟の口喧嘩ぐらいなら大いにやらせましょう。手を出している時は、怪我のないようにと配慮はして、あとはエスカレートしたり、親に助けを求めて来ない限りやらせておきましょう。 お母さんは、喧嘩の治め方も勉強しましょう。下手に途中で介入すると、両者とも発散しきれず欲求不満が起こります。口喧嘩は、言い負かせるための頭の訓練になりますし、自己主張のよいトレーニングになります。 口喧嘩に負けて手を出し、暴力がエスカレートしたら止めます。その時は、手を出している方を抱き留めること。母親が情況にかまわず、年下の方をかばって兄を叱ると、兄は二対一で孤立したような気になり、かえって治まらなかったり、遺恨が残ります。喧嘩両成敗も弟にとってはよいのですが、兄は弟と対等に扱われて不満です。この年頃では兄の方が圧倒的に力がありますから、兄の方が叱られる場合が多いでしょう。抱き留められると心は安らぐのです。原因を聞く時、「どうして暴力ふるったの?」と聞くのは上策ではありません。感情的になっている時には、簡単には説明できないものです。「きっかけは何だったのか」「相手はその時どうしたのか」、子ども同士のやりとりをできるだけ忠実に再現することです。 そして、「どちらが先に手を出したのか」「手を出された方はその前になんと言ったのか」等を聞きます。繰り返し経緯を聞いていくと、どっちもどっちという情況が当人達にも見えてきます。そこで弟に「お兄ちゃんが何といったら、車を渡したかな?」と聴きます。「ちゃんと返してと言えば返した」兄に「弟がどうしたら叩かなかった?」と聴きます。「僕の車を投げなければ叩かなかった」お互いに相手の考えが分かります。そこで今後は、兄が「車は四時頃からなら使っていいよ」と貸せる時間をはっきり言うようにすればいいのです。 なお、親はこの程度のことで喧嘩をしたからといって体罰を加えないこと。親が安易に手を出すと兄弟はそれぞれ「僕は間違ってないのに、相手のせいでこんな痛い思いをさせられるんだ」と恨み合ってしまいます。子どもが納得する話し合いをすることが大事です。(関 輝夫) 33. つい兄弟を比べてしまいます 上が五歳の男子、下が三歳の男の子です。兄が最近幼稚園に行くのをぐずぐず しはじめ、朝起きるのもわたしが起こさないとだめです。用意もなかなかしません。片付けも、弟がさっさとやるのに比べてあまりにもぐずぐずしているので、 いけないと思いながらもつい、いつも怒ってしまいます。どうしたらよいでしょう。 今、お子さんにしている注意や、小言や、叱責を続けたらどうなりますか? 多分、ますますお兄ちゃんは言うことをきかなくなり、お母さんはもっとエスカレートして最後には、怒鳴ってしまって、後味の悪いものになるでしょう。 そこで、ちょっと間を置いてみましょう。そして「もし今、何も言わなかったら、どうかな」と考えてみてください。三分間、黙って見守ってください。もし「今日休む」といったら一日ぐらい休んで一緒に居てください。時間さえかければちゃんとできるお子さんではありませんか?支度ができれば、登園時間が過ぎても「行く!」と言い出すこともあります。そんな時に「今頃できたって遅い。一度行かないと言ったんだから、行かせません。」とこらしめないこと。「そう、行く気になったの、途中からでも行くのは偉いよ」とほめましょう。チャンスを与えるのです。子どもはもう「やるべき事はやらなければならない」と分っているのです。ぐずぐずを直すことも大事ですが、気を取り直して頑張るとか、「再チャレンジ」する姿勢も人生には、もっと大事なことです。皆と一緒にできなくとも後からがんばって追い付くという強さのトレーニングにしてください。お兄ちゃんにはそういう力を付けてもらいましょう。 お子さんがぐずだと、どうしてもお母さんはせっかちになります。せっかちなお母さんがしつけると、子どもはますますぐずになります。悪循環になります。また、兄がもたもたしていると、弟は兄の失敗を見て、兄よりはよくやるものです。そこで親が弟をほめると兄はひがみ、弟にちょっかいを出します。そこで親はまた兄を叱ります。ここでも悪循環です。兄のもたもたは弟が母親から気にかけてもらっていることへの羨ましさや嫉妬からかもしれません。 お兄さんがぐずな性格は考え方によっては、「おっとり、おおらか、マイペース」な面があるわけです。はっきりいってお母さんとのペースの違い、テンポの違いです。だから、お母さんがお兄さんのペースをつかみましょう。お母さん自身、話し方から、食べ方、歩き方、呼吸もゆっくりとしてみてください。「僕をそのまま認めてよ!」の叫びなのです。(関 輝夫)34 食事や着替えをどうしつけたら三年保育にかよっている男の子です。幼稚園には喜んで行っているのですが、家では食事に時間がかかります。テレビを見ながらの食事ですが、テレビを消すと泣き出してしまいます。着替えも遅く、早くしなさいといつも注意しているのですが一向になおりません。 幼稚園に喜んで行っているのなら、集団生活の楽しさは味わっていると考えられますから、心の発達は、ノーマルに育っている子なのだろうと思われます。帰ってきてから、先生のお話やクラスの友達の名前が出てきているようなら安心ですね。 さて、食事に時間がかかるとのことですが、テレビを見ながらならば当然のことでしょう。食事の時はテレビは消しておく。最初からつけない。これが普通の家庭でやっていることです。見ている人がいない部屋に朝から晩までテレビをつけっぱなしのお宅があるというのを時々耳にしますが、それは異常な状態の家庭なのです。少なくとも、子どもの生活習慣の中で、食事中にテレビを見ないと食べられないというのは、なんとしても急いであらためなければなりません。一度ついた習慣は容易に直すことはできません。だからこそ、低年齢の時期にサッサと改善させましょう。 今、幼稚園の子どもたちは、集中力と持続力を急速に低下させています。人の話を、きちんと聞かずに、ぼんやりとした理解しか得られてないのに、その不足感も自分で気がつかない。何か作業をする時に、すぐにあきてしまって、もう少しねばってやれば、能力的に高められる場合ですら、想像力を働かすことができないために、なげやりでいいかげんな結果しか出せないで平気でいる。そういった子の背景を分析してみますと、テレビづけの日課が浮かびあがります。テレビは人に強制しません。なんとなくぼんやり眺め、なにか面白そうなことがありそうなと思わせて、受身の態度をつけさせてしまうのです。依存型人間をつくるのです。 「ほら、これ美味しいでしょ。こんな風にしてお母さん作ったのよ」と食卓に乗っている食事の中味について話題が豊富ならば、食べることに集中してくれるはずです。夕食の時や休日にはもちろんお父さんも一緒の時が多いでしょう。いろんな話題で楽しく賑やかな食事の時間をどう演出するか、ご両親で知恵をしぼってください。着替えのおそい子は、自分ひとりでできるという自信を持たせることが大切。「キチンとボタンもはめられたね」とほめてあげる場面を作ること。過干渉と過保護は逆効果です。じっと見守る親の根気が勝負の分れ目だと思います。(森本 邦子) 35 約束を守らない 今年小学校に入学する六歳の女の子ですが、最近約束やルールを守らないようになり、注意しても言うことを聞こうともしません。時間にもルーズになり、小学校に行くようになったら困ることも多いだろうと心配しています。どうしたらよいでしょうか。 子どもは三歳前後の反抗期を過ぎると、結構親の言うことを聞いてくれるようになり、親を喜ばせます。母親によっては「こんなにいい子でいいのかしら」と心配する人も出てきます。ところが小学校へ行く直前になって、今まで素直だった子どもが親の言うことを聞かなくなります。 A子はお父さんと約束して新聞取りが仕事になっていました。毎朝忘れずに取ってきてくれるので、お父さんはほめていましたが、近頃は催促しても知らん顔をするようになりました。そればかりか朝起きて顔を洗うこともしなくなりました。お母さんは折角時間をかけて習慣づけたのにやらなくなったとがっかりしています。約束を守らなくなったばかりか、催促すると口答えするのです。母親はどうしてこんなに悪い子になったのかと嘆いています。 子どもは六歳くらいになると、言葉が達者になって、言葉で親をやり込めるようになります。この時期を口答え期といいます。親にとって子どもはある時はよい子だったり、ある時は困る子だったりしながら自我を育てます。決められたルールをそのまま素直に受け入れている時は外側を整える時期です。外側を作っている時期を縦の発達といいます。一応の成長は見えるが、それだけでは内側の育ちは期待できません。外側から見ると、混沌として見える横の発達という時期があって、内側が満たされ、自我の確立が可能になるのです。 したがって約束を守らない、ルールを守らない等、大人にとって困ることが起こる時期こそ、子どもにとって大切な横の発達の時期であると考えることができます。親が困るような状態が続いている時は、子どもなりに葛藤しながら内面を作る努力をしているのです。多少の約束違反もルール違反も子どもが自己の内面を育てている一つの成長過程と考えて、ゆとりを持って見守っていきたいものです。(立川多恵子)36 反抗的に言い返す三歳の女子です。幼稚園ではよい子ですといわれてます。最近、乱暴な男の子の言葉を覚えて、行動も粗野になり、反抗的になって言い返します。つい叱って泣かしてしまいます。幼稚園から帰ると、少し元気がなく、疲れ気味で午睡をしてしまうのです。 三歳児ですからいままでに、集団生活や他人の指示のもとで生活をしたことがないのですね。親子だけの生活から、他人をまじえての生活環境に変わり、新しい環境に適応しようとしている状況がうかがえます。 幼児の行動は、模倣からはじまって、順応することです。幼稚園では運動機能とことばの発達した年長組の子が目立って、みんなが元気いっぱい、ワイワイと遊んでいます。年少組の子も、一生懸命になってまねをしようとしているのです。 いままで聞いたこともない男の子のことばに、興味を覚えて、すぐに口にだしてみたくなるのが三歳児です。家に帰ってから、すぐにまねをして、幼稚園で覚えたことばを口にするだけのことです。二、三日もすれば、今回のことは忘れてしまいます。 とっぴな行為や、粗野な行動にも、はじめは興味をもちますが、すぐに本来の女の子の行動に戻ってしまいますから、心配することはありません。 幼稚園でよい子であり続けるのは、エネルギーがいるものです。家に帰ってから、急に解放感と安心感がわいて、自由奔放にふるまいたいのです。このような状態は、親の目には悪い子、言うことをきかない子のようにうつるのです。 三歳児は、完全に親依存であった頃から脱却して、自立に向かおうとする時期です。自分を認識する自我が目覚める時になったのです。自分を主張するのですから、親からみると、反抗しているように見えるのです。この状況を一般的には、第一反抗期といいます。反抗しているのではないのですから、第一自我形成期というべきでしょう。(第二反抗期とは思春期のことを心理学ではいいます)(立川多恵子) 37 反抗期というのでしょうか 年中の男の子です。自己主張が強いので困ります。親の指示や注意にも反発ばかりします。何か頼むと「嫌だよ!」と言ってまったく可愛げがありません。反抗期というのでしょうか。こんな時どう扱ったらよいでしょう。 親からみたら反抗でも子どもの成長からみたら自立です。反抗しなければ自立はできないし、大人になることができません。お子さんは十分に自己主張し、しっかり自立の芽が育っているようです。このようにお子さんが自立できるようになったのはご両親の上手な子育ての賜です。子育てがうまくいっているのです。 子どもは親の言う「片付けなさい」「起きなさい」「時間だよ」などの内容に文句があるのではないのです。それをいう時の親の言い方に抵抗を感じているのです。「早くしなさい!」という言葉の中に「いつだってもたもたして」「困った子だ」「駄目な子」「いつだって言うこと聞かないで」「ほかの子は言うこときくのに」という気持ちを感じているのです。表情、まなざし、態度の中の、親のいらいらした気持ちに敏感に反応しているのです。 「何をいうか」から「どういうか」です。子どもを無条件に認めて、「いつでも大事な子だよ」「できるだけやればいいよ」「おまえを愛しているよ」との心が子どもに伝われば、子どもはちゃんとできるのです。日頃から子どものできたところを認め、信頼関係をつくった上での指示であればいいのです。 また、どんな時にはいうことを聞いて素直になるのかも考えてみましょう。機嫌のよい時、疲れていない時、何かに夢中になっている時、ほめられた時なのではないでしょうか。タイミングも大事です。テレビに夢中になっている時や、他のことで注意されて不機嫌な時には無理でしょう。少し気分が変わるのを待ちましょう。三分、長くても三時間待てばいいのです。 そして、子どもにお手伝いをさせる時には、「頼みがあるんだけど、いいかな」「ほんとに助けてもらいたいんだけど」などとプライドを満足させる頼み方が大事です。「いちいち子どもの機嫌なんか取れるか」「甘やかしたら、先々よくない」などと考えないこと。 おだててもやってくれた時にみんなでほめ、讃え、感謝した方がずっとお子さんはやる気が出てくるし、その気になりやすいと思いませんか。できないことをせめるより「できたことを認めること」が子育てのこつです。(関 輝夫)38 ことばが遅れている五歳の女の子ですが、ことばの数が大変に少ないのと、質問には答えることもありますが会話になりません。一歳頃に「ダメ」とか「ウマウマ」とか言い始めていたのですが、その後ことばが増加しませんでした。幼稚園に入ってから、少しずつことばは増えてきています。テレビのコマーシャルをよく覚えたりしていますし、おうむ返しをよく言っていました。園では、一人で自由に遊んでおり、友達とは遊びませんし、先生の指示にも従わないようです。 近年、ことばが増加しない子どもが大変に多くなっています。昔からあったことばの問題は、「せんせい」が「てんてい」になってしまう問題などが多かったのですがこの構音障害は、多くの場合に小学校一年頃にはほとんどがなおってしまうのですがことばの少ない子、会話にならない子の場合は、早期の治療指導でないとなおりにくく、二、三歳の治療指導が望まれているものもあります。 三歳、四歳になってことばが少ないかない場合は、知恵おくれからのもの、耳のきこえからのもの、小児自閉症からのもの、小児失語症からのものなどが考えられます。 知的障害の程度が重い場合には、歩行開始が大変に遅いことが多いなども含めて総合判定が必要です。耳のきこえは発していることばの発音が良い場合は心配ないでしょう。小児自閉症の場合がここ二〇年程前から急増してきています。自閉症は重い場合は目があわない、指示に従わない、言うことをきかない、専門用語では感情交流が持てないとも言われます。そして、ことばがないか少ない、増加してきても会話になりにくく、応答はするのですが、おうむ返しも一つの特徴です。大変にすきで、興味を示し、上手にできるものを持っていることが多く、ミニカーを並べたり、名前を覚えたり、電車の名前を覚えたりなどの強い特異興味を持つことがほとんどです。失語症は人間関係はつくし、目も合うし、感情交流はするのですがことばを身につけていない子どもです。 小児自閉症、失語症については脳障害なので治らないと言われていましたし、今も言う人がいますが年齢が小さく、二、三歳で治療を始め、効果的にすすんだ場合は小学校は普通学級に、中学・高校・大学と進学している人もいますが効果的な治療指導をとならなかった場合は、成人してもことばを身につけていません。早期の治療指導が効果的なので、一歳、二歳でも変だなと思ったら、幼児教育センターに相談してください。(金子 保) 39 幼児語が直らない 四月から小学校へ入学する長男です。過日の就学時健康診断では異常がないと言われたのですが、いまだに幼児語が直らないのです。このままでよいものか迷っています。 幼児語とは、幼児期に話される未熟な言語をまとめて呼んでいますが、大きく分けると、(1)幼児語と、(2)幼児音に分けることができます。 (1)の幼児語には、ワンワン(犬)、ブーブー(自動車)のように擬声語で言い代えているものや、おつむ(頭)、うまうま(ご飯)などのように正しい名称があるのに、別な言葉で言い表わしているものがあります。一方、(2)の幼児音は、おたら(お皿)、ちゃかな(魚)のように、構音が不明瞭になってしまうものをさして呼んでいます。例えば、「せんせい」と言うのにも、「シェンシェイ」(サ行音がシャ行化)「チェンチェイ」(サ行音がチャ行化)「テンテイ」(サ行音がタ行化)のような例がみられます。したがって、幼児語には、幼児本来の未熟な発語をさす幼児語と、構音の遅れが残っていう幼児音の二つの場合があります。 質問のお子さんは、おそらく、(2)の幼児音が直っていないのではないでしょうか。間もなく入学する年長児なので、ご両親もこのままいつまでも直らないと、入学してからもみんなにからかわれたり、ばかにされたりしないかと心配しているのではないかと思います。結果から先に述べますと、健康診断でも異常がないと言われたのですから、このままで自然と直っていくと思います。では、どうしてなかなか直らないのでしょう。それは、幼児音といわれるように、その子が年齢に比較して、幼い扱い(赤ちゃん扱い)を長く受けてきたからです。赤ちゃん時代の言葉を覚えたての頃のなんともタドタドしい話し方を、まわりのおとな達が、かわいいと思って、同じように使って話しかけてきたのかもしれません。そうでなくとも、扱いを幼いままにしておくと、気持ちの高まりが遅れ、幼児語、幼児音が消えにくいのです。幼児の年齢に合わせて、話しかけも上向かせていくことが大切です。もう一つ考えられることは、友達との交流の少ない生活をさせていないかどうかです。たくさんの友達と遊び回っている子なら、いつの間にか友達の使っている正しい言葉や発音を聞き、自然矯正されていきます。 いけないことは、無理に直そうとして、「違うでしょ。おたらではなくておさらよ。」と、しつこくたしなめたり、叱ることです。かえって話すことをいとう子になりかねません。(田口 俊雄)40. どもりが心配です年中の男の子ですが六月頃からどもるようになり、夏休みにはなかったのですが二学期になってまた始まってしまいました。三人兄弟の長男で下に弟、妹がおり、長男への注意や叱ることが多かったようにも思いまして近頃は叱らないようにしていますがなおりません。近頃はどもることを本人も意識しているように思います。現在はないように思いますがこのことで友達からいやがらせをされたらと心配です。 どもることについては現象としては色々のタイプもあり、原因らしきことも言われますがほんとの因果関係はわかっていません。ですからなおし方についても効果的と思えることを実施することになります。 一つには四歳前後にことばが大変に多く身についてきて、言おうとする強い感情の中でことばが出ないなどしてどもるようになると考えられるものがあります。親など特に母親のことばが大変に早口なために、これをモデルに会話をしようとし、できないためにどもるのだという考え方があります。どういう理由かわかりませんが、左ききをなおそうと、右手でペンを持たせ、箸を持たせて、きびしく右になおそうとしますとどもることが多いのです。右手を用いるための脳神経の不具合なのか、叱られ、注意され、自分でがんばらねばならないなどのプレッシャーかは原因がわかりません。叱られることが多かったり、欲求不満からとも考えられます。 なおし方としては、どうしたの、というおどろいたような感情を示しての接し方をやめ、何も問題ないように、やさしく、ゆったりと聞いてやることです。話し方が早い人はゆっくりするよう心がけることも大切です。いそがせての会話をさけたいと思います。左手の矯正については、これを中止しますとほとんど消えてしまいますのでどもりが出る程の矯正をしますと行動しなくなったりの他にも問題が現われますので左手の矯正はやめるべきでしょう。 どもりを本人が意識している時と、していない時があり、始めは意識していないのですが、まわりから言われたり、自分でも変だと感じて、わかってくるものです。歌を歌ったり、本を読む時はどもらないことも多いのでこんな時は普通に言えたねと大丈夫だと思いこませることも効果的です。どもりは無意識の心の現象ですので催眠療法も効果的ですが他者催眠法は小学三年生以後でないと実施できません。種々試みてください。(金子 保)41 友達と遊ぼうとしない 年少の男の子です。一人遊びを楽しんでいるようで、なかなか友達と遊ぼうとしません。近所の子どもと違って、お話もまとまってできないで短いことばの連続です。全体的に遅れているのではないかと心配です。歩行の開始は一歳丁度で普通でした。ことばのはじまりも一歳頃で、ママ、ダメなどと言い始めました。しかし、その後にことばがほとんど増加しないで二歳、三歳となってきたように思います。友達への興味もほとんどありませんで、いつも一人で好きなことをしていることが多かった子どもです。 三歳をすぎて友人との遊びに興味を示さない子ども、一人遊びがすきで、友人と遊ばない子どもの場合には二つの要因が考えられます。一つは、友人との遊びが大変少なく、経験不足でどう遊んだらよいかわからないのと、友人にたたかれたりしていやな経験をしてしまい、これがもとで興味を示さない子どもです。もう一つの要因は、自閉性を持ち一人で好きなことをしていて、友人への興味を示さず、まねをしたり、友人のあとを追いかけたりしない子どもです。 前者の場合は、親との会話能力とか、親との遊びを求めることが多いのですか、後者の場合は、ことばがないか、ことばがあっても少なく、友人への興味も少なく、まねをしない傾向が強く、大声で笑ったりの傾向はほとんどみられません。好きな遊びは熱中し、またこだわりの強いものを持つことが多いのです。ことばがあっても少なく、こちらからの質問には答えるのですが、自分から話しかけてこない、ほめてもよろこばない傾向が強いのです。自閉症ないし、自閉症様の子どもは、脳障害が要因と言われますが近頃は接し方で大きく変わり、会話もできるようになり、友人とも遊ぶようになるなどなおる場合も多く、軽度になることが多いのですが年齢が小さい程よくなる可能性が高いのです。 ただ、一歳半、三歳時検診の時に異常なしとか、様子を見ましょうと言われて、治療指導を開始しないでいると重い状態のまま、五歳、六歳となってしまいますと治療指導の効果が大変に少なくなります。二歳、三歳の方がきわめて効果的ですので早めに幼児教育センターなどに相談してください。(金子 保) 42 「おけいこごと」をさせるには 幼稚園の同じクラスのお母さんに聞くと、みんないろいろな「おけいこごと」へ通っているようです。わが子には、まだ何もさせていませんが「おけいこごと」をさせるには、どんな親の心構えがいるのでしょうか。 幼児の「おけいこごと」大流行の時代です。少子時代を迎え、子どもの将来を考える場合、早くから何か身につくものを習わせておく方がよいと考えるのは、親心として当然のことかもしれません。しかし、一言で「おけいこごと」といっても、多様なジャンルがあり、慎重に考慮して選択しなくては、百害あって一利なしです。 「子ども白書」などをみると、全国的には六割近くの幼児が何らかの「おけいこごと」に通っているようです。最も多いのは、スイミングで、子どもたちの健康や体力作りに対する関心がいかに高いかを証明しています。次はピアノやエレクトーンで、最近は知育に比べて音楽、絵画工作など情操教育の割合が、スイミング、サッカー、体操などと並んで高くなっています。つめこみ教育に疑問がもたれている昨今、豊かな人間性がより求められているのかもしれません。男女別にみると、学習教室や英語といった将来をにらんだおけいこごとは男の子に人気があるようです。その他、習字、バレエ、リトミックなど女の子向きのおけいこごとも結構盛んで、週に一~二度のレッスンを受けているようです。 一方、「おけいこごと」に通わせていない理由もいろいろあります。「幼児教室に一日体験入学したことがあるが、それほど高いお金を払ってまで習わせなくとも、母親である自分に教えられることがたくさんあると実感した」「まわりに通っている子が多いのは気になるが、早くからいろいろ学ばせなくても親子のコミュニケーションという、今しかできないことを十分にしておきたいので」「転勤族なので、そのたび教わる先生がかわってしまうと子どもの心が不安定になるから」などで、それぞれ納得のできる理由です。そこで、わが子に何かおけいこごとと考えているご両親には、次のポイントを心得ておいてほしいと思います。 子どもが喜んで興味、関心を向けていけるものを--。親の見栄や競争心は避けること。子どもの心がよくわかる先生を慎重に選びましょう。通う時期は早くても三歳頃からで、子どもの体力や心の負担にならないように。親も興味を持って一緒に学ぶ気持ちを--。なるべく継続して忍耐力も育てましょう。幼児期に必要な友だちとの遊びがおろそかにならないように。(田口 俊雄) 43 早期教育って必要なの おなじクラスの友達が五人とも全て塾に通っています。文字、漢字の読み書き、詩の暗唱もしていると伺っております。ほかの子に比べて勉強が遅くなり、将来に向け不利になることはないでしょうか。 人間には、幼児期に身につけたら、なかなか忘れないものがたくさんあります。例えば、しつけといわれる基本的な生活習慣(睡眠、排泄、食事、着衣、清潔等)は、小さい時にしっかり身につけさせないと、後からではなかなか身につくものではありません。また、身体で覚えたものも、いったん身についたら消えにくいです。そのよい例が、自転車や水泳などで、中断しても、じきに元に戻ることができます。ところが、知的なもの、勉強的なものは、継続してやっていないと、じきに忘れてしまいます。数学や化学などの方程式は覚えるそばから忘れていくものです。早期教育が盛んな英語も同じで、使っていないとどんどん忘れてしまいます。つまり、早期教育の効果のあるものと、いっしょうけんめいにやっても消えてしまいやすいものがあることを知っておきましょう。 たしかに子どもはすごく感性が豊かで、年齢に合わせた理解力がたくさんあるので、幼児でも漢字をたくさん与えたり、数字を覚えさせ、計算する力を与えれば、九九でも百人一首でもそらんじることはできます。ただ、そういう知的な教育以前に幼児期でなければできないもっと大事なことがあると思います。それをいい加減にして、漢字や数字に重点を置くのは、将来にとって賢明なやり方とはいえません。ただ、子ども自身が勉強に興味をもってくる場合もあります。兄姉が勉強しているのを見て、文字を覚えたい欲求が出たり、家がお店をやっていて、お金に興味をもって計算することに意欲がでてきたら、それに合わせて教えてあげましょう。興味がわいてきたのに、まだ早いからと取り上げないのは愚かだと思います。年齢的にみてまだ少し早いと思っても、文字や計算を教えてあげたり、塾に通わせてもよいでしょう。 もとより、幼児期には、塾やおけいこごとの教室へ行かせるより、戸外の広場や公園で、友達と十分に遊ぶことが、心身の発達の上で必要なことですが、少子時代の現状では、なかなか難しいようです。幼稚園から帰って外へ行っても、友達はみんな塾やおけいこごとに行っていて、遊ぶ相手がいないとこぼす母親もいます。今は、何かを身につけようというより、遊び相手となる友達を求めて、塾やおけいこごとに行くケースがほとんどなのかもしれません。(田口 俊雄)44 寝る時になると指しゃぶりが四月から小学校に入学する年長組にかよう男の子です。指しゃぶりがなおりません。特に寝る時になると激しいのです。どうしてそうするのか理由がよくわかりません。なんとか止めさせたいのですが、よい方法が見つかりません。 親にとっては理解できなかったり、そうする理由がわからない行動も、やっている子どもにとっては、何等かの理由があってやっていることなのです。幼児の場合は、そのことを意識してやっているわけではもちろんありません。また、人から「やりなさい」と言われてやっていることではない場合、とても心地がよいか、身体的な快感がある場合がほとんどです。それよりも、指しゃぶりをやめさせたいと思われる理由をハッキリさせてみませんか。学校へ行ってからも続けられたらみっともない、というのが一つ。指に何等かの異常が発生しないかという心配もあるかもしれません。もっと、指しゃぶりをする子は親の愛情が薄いという、うわさを相談者の方は知っておられるからでしょうか? 結論から言えば、子どもの指しゃぶりは、指がとけてなくなる心配もなく、時期がくれば、ピタリと止ってしまう、きわめて一過性の現象ですから、悩みすぎるのはやめにしましょう。 ただ、では全く気にせず放っておけばいいというものでも決してありません。現在、指しゃぶりをしている子は、そうすることが心地よく、そうすることで、心の平安を保っているのです。どんな時に指しゃぶりをするかに気がつくことで解決の糸口は見えてくるのですが、寝る時に多いということは、一日の終わりに、「おやすみなさい」を言って一人で眠りにつくには、何かを言いたりないという思いを抱えているのでしょう。もしかしたら、小さな弟や妹がいて母親にもっと甘えたくても、ひざに乗ることができなかった。幼稚園で、友だちにハッキリと言えばスッキリすることも、グッとおさえこんで帰ってきたから。といった、寂しさ、くやしさ、もっと切ない感情を内向型の子だから、一人でかかえ、その感情の発散を指をしゃぶる快楽で、癒そうとしていることも考えられないでしょうか。時期がくれば治るという、その時期とは、どんな状態になった時かを、ご両親で知恵を出し合って考えてみてみませんか。 スキンシップを沢山する場面作りを工夫してみてください。夜、寝る前には絵本をたまには読んであげてください。休日には家族中で外遊びをして大ハシャギをしてみませんか。行動が活発になる。よくおしゃべりをするようになる。そんな子にするためにユーモアのある暮しを!!(森本 邦子) 45 指しゃぶりがなおらない下の子が生まれてからなのですが、指しゃぶりがなおりません。注意した時は一応やめるのですがすぐ始めます。指の形がひどくなっています。いろいろ工夫してみたのですが、効果はありません。よい矯正方法を教えてください。 子どもにとって兄弟のいることはよいことですが、上の子が母親にまだ甘えたい時期に下の子が生まれると、母親の関心はどうしても下の子に移ってしまうので、上の子にいろいろなトラブルが起こることがあります。わたしの家の長女と次女の間は約三年離れていますが、長女は妹が生まれると、再びミルク瓶で飲むようになり、言葉も幼児語に戻ってしまいました。おねしょが始まったり、指しゃぶりが頻繁になる子どもも出てきます。どれも母親の関心が下の子に向けられて、上の子が欲求不満を起こしてしまう場合です。 「ママこっちへ向いて」という子どもの叫びが、親にとって困った現象を生み出すのですが、家族がそれに気づいて意識的に上の子の相手をしてやると違ってきます。 お母さんはなかなか大変だと思いますが、下の子が眠った時に上の子のために時間をとっていただけないでしょうか、膝にのせて絵本を読んでやることもいいと思います。お母さんと一緒に家事を楽しむのもいいでしょう。母親の中には赤ちゃんの寝ているうちに家事能率をあげておかなければとあせる人もいると思いますが、時間を作って上の子の気持ちも受け止めてやってください。母親とのこうしたふれあいに納得できると、子どもは安定して自分なりの遊びを始めます。遊びに熱中していると子どもは不思議に指しゃぶりをしなくなります。 指しゃぶりそのものをやめさせたいと思うと、子どもはかえって指しゃぶりに固執することになります。したがって指しゃぶりをやめさせることだけを考えないでください。遊びに集中できるようになると、指しゃぶりする時間がなくなります。子どもの生活を変えることによってお母さんのお腹の中でもしていたという指しゃぶりから卒業できるのです。(立川多恵子)46 夜中に奇声を発します三歳の女子です。夜中に奇声を発して起き上がり、歩き回ったりふとんを叩いたりします。少し目覚めた状態になると落ち着きます。何か神経的に、あるいは情緒的に障害があるのでしょうか。 睡眠中に突然に起き上がり、恐怖におびえた叫び声や表情をあらわすことがあります。ときには歩いたり、走ったりするのですが、翌朝にはぜんぜん記憶にありません。 これを“夜驚症”といいます。この状態は深い睡眠中に恐怖を伴う夢をみることにより、部分的な覚醒になるので、一種のねぼけ、覚醒障害です。 この発作がみられるのは、入眠から一時間半ぐらいで起こることが多いのです。 このねぼけ状態は、数分から一〇分ぐらい続きます。 三歳から六歳ぐらいで発症しますが、思春期になる頃には次第に消失してしまいます。 男子に多くみられます。小児の一~四パーセントにみられるといいます。 この夜驚症は、親子でも発生は多いことから、家族的な素因が強いと推測されています。 子どもの脳神経系の発達段階にみられる症状でありますから、日常の生活が大切です。 日常生活は、規則正しく、一定のリズムで、毎日の生活をする。 刺激的で、興奮が持続したり、恐怖や不安を与えることは避ける。 夜驚症の発作の頻度が高いときには、医師から、軽い作用のねむりにつく、催眠剤を使用してもよいのです。これをきっかけで、治まることがあります。 思春期を過ぎれば、自然に治ってしまいますから、心配しすぎはいけません。 睡眠は脳内の脳幹部にある中枢の調節機構でおこります。この機能のずれが部分的な覚醒状態になり、昼間にうけた強いストレスが、記憶と情動の中枢である大脳辺縁系への刺激が誘因になると考えられています。(森 彪)47 おねしょがなおらない五歳の男の子です。おむつはずっと前にとれ、トイレも自分から行きますし、問題ないのですが夜尿がなおりません。夜起こしてつれていきまして排尿しても次の日に聞いても本人は覚えていません。夕方から水を飲ませないようにしてみたりもしましたがききめがありません。夜尿だけが問題で、絵も描きますし、文字も読みますし、知的にも、身体的にも遅れはないと思いますし、友達ともよく遊び、運動能力も社会性も問題ないと思います。 小学校に入学する頃になっても夜尿で困っている子どもは多くいます。年長さんの時に「お泊り保育」に夜尿が原因で参加できない子どももいます。 昼間もおむつがとれないで、夜尿もある場合は、全体としての遅れが心配ですがこの事例の様に就眠中の夜尿のみの場合について述べてみましょう。 子どもは生まれてから長い間は夜尿なのですが、五歳をすぎても夜尿の場合には夜尿症とも言われています。生後ずっと夜尿である一次性のものと、夜尿をしなくなってから、また夜尿になった二次性のものがあります。書物などに夜尿は愛情不足によるとも書かれていますがこれは再発した頃に母が病気で入院したり、次の子どもが生まれたり、母が勤務をはじめたり、内職を始めたりなどの親子の接触不足などの愛情不足が推察されることからです。この場合は、ともかく接触を多くしてめんどうを見てください。 一次性、二次性とも始めに医師の診断をお願いし、精神的なものと言われた時には次のような暗示法がありますので実施してみてください。子どもを就眠させる時に添寝をし、色々と話し合いながら本人のまどろむのを待ちます。まどろみの状態になったら「今夜からおしっこが出そうになったり、おしっこがたまると目がさめるよ、目がさめたらママを起こそうね」ということばを寝つくまで三~四回言うのです。 次の条件を守りますと大変に効果的です。 添寝の習慣のない場合はこの生活を続けてからにしてください。寝つきの悪い子は運動量を多くするなどして寝つきをよくしてからにしてください。ほかの兄弟は先に寝かせてください。母親はこのまま寝てしまうよという状態にして実施してください。 この方法は、四歳頃から六歳ぐらいまでは効果的です。実施する人は本人と信頼関係があれば誰でもかまいません。六歳以上になったら、目がさめたらママを起こさないで、自分からトイレに行かせる方法もあります。(金子 保) 48 歯ぎしりがひどい 五歳の男子です。長い間歯ぎしりをしています。親が寝付 かれないほどの音を立ててギシギシと歯ぎしりをします。歯がすり減ってしまうのではないかと心配です。あごの骨格が悪いのでしょうか。歯ぎしりは遺伝する のでしょうか。原因はなんでしょうか。手当てや治療はあるのでしょうか。 五歳児では、いわゆる乳歯が全部出そろって、上下の歯数は二十本になりました。この頃から、歯ぎしりをする子どもが目立つようになります。 歯ぎしりの原因は、乳歯の歯ならびが不ぞろいのため、かみ合せが不調和によっておこります。歯を強すり合せるときにおこる滑走雑音です。 歯のかみ合せの不調和(咬合不全)は、乳歯から永久歯に生えかわる時期におこりやすいのですが、一般には、永久歯が出そろって、歯並びが完成する頃には、自然に治ってしまうものです。 健康な子どもでも、一夜に軽い歯ぎしりをすることがありますが、この子どものように、親が寝付かれないほどの歯ぎしりでは、歯並びがよくないのですから、小児歯科の先生に相談してください。 歯ぎしりがひどいときには、乳児の前歯がすり減って、歯の内部の組織をも壊してしまい、次に生えてくる永久歯にも影響します。また永久歯の歯並びや、かみ合せの咬合不全にも影響します。 歯並びのわるさを治すことは、美的な願望をもあって、容易に歯列矯正を行います。 歯のかみ合せを治す「咬合調整」には、歯の突起している部分を削ることが必要になりますから、歯科の先生のもとで治療してください。 歯ぎしりが治り難いときには、「ナイトガード」というプラスチック製の口腔内の装置を、夜に寝るときにはめてもらいます。この装置は健康保険で作れます。 遺伝とか、どんな病気かと悩んでいるより、治療法があるのですから、速やかに歯科医と相談して、治療方法をきめてもらいましょう。(森 彪)49. チック症状の治し方五歳の男子、幼稚園の年長組です。体は大柄ですが、おとなしい子で運動は得意ではありません。園の帰りに、ピアノと英語塾に通っています。二週間前からスイミングクラブに通うようになりました。夕食時にまぶたをパチパチさせていました。翌朝の通園時には再びまぶたのパチパチを繰り返していました。病院の診察ではチック症とのことです。どうしたらなおるのでしょう。 チックは、幼児期にみられる一過性の微症状であると思ってください。 日常の習慣で問題になる、指しゃぶりや爪かみや夜尿と同じように必ず治るものだと確信をもって、チックの子どもに接してください。 治療の第一方針は、チック症状のことを、親たちは口うるさく注意することは厳禁です。心理的な葛藤を取り除き、精神的にリラックスさせることです。 子どものチック症状について、家族がチックに注目することのないように心掛けましょう。 子どもの日常生活で、生活リズムを壊わすようなスケジュールは変更しましょう。 好きな遊びで、全身を使い、友だちと楽しく遊べるように心掛けましょう。 子どものチックは一過性ですから、速やかに治療方針や心理療法の指導をうけましょう。 チックは幼児や学童の男子に多くみられ、発症したときは二週間以上は持続するものであると認識して、家族は気長に、ゆったりとした態度をとってください。 チックの症状は多彩です。 まぶたのまばたきが最も多く、次いで頭をふることが六十~七十パーセントを占めます。顔をしかめたり、口をまげたり、鼻翼をぴくぴくさせる、肩をびくっとさせる、からだや下肢をひくっと動かすなどです。チックの筋肉運動の特色は、不随意で、反復的で、急速で、突発的で、非律動的で、いつも同じ症状をあらわします。音声チックのタイプもあります。いつもせきばらいをしたり、単純な「アッ」「パッ」「ホッ」などを発声をします。年長児では、意味のない、汚い、卑わいな言葉などを口にすることがあります。(森 彪) 50 よその子を叱ってもよいでしょうか 近くに小さな公園があり、子ども達がよく遊びにきていま す。その中にときどき意地悪をする子がいます。わたしはそれを見た時、いつも叱るべきかどうか迷ってしまいます。叱った後で親に恨まれたり、悪口をいわれ たりするのがいやでつい見逃してしまうのです。その事がいつも心に引っかかりすっきりしません。思い切って叱るべきでしょうか。 結論からいうと、ぜひ叱っていただきたいと思います。 こんな出来事がありました。四歳の男の子が、グループで仲良く遊んでいた友達をいきなり後ろから突き飛ばしたり、髪の毛を引っ張ったりして泣かせてしまいました。「どうして、意地悪するの。」と聞いたところ、その子は、「一緒に遊びたいんだもの。」と答えました。「じゃあ、一緒に遊んであげてね。」とみんなにいうと、今までメソメソ泣いていた友達がケロリとして、一緒に遊びはじめました。これが子どもなんです。 幼児の意地悪は、経験やことばの未熟から起こる場合が多く、大人のように恨みやねたみなどから起こるということはないといってよいでしょう。 ここで大切なことは、『意地悪をする子は悪い子だ』という目で見ないことです。意地悪をする子にも必ず『よい心』があるということをしっかりと押さえておくことです。そして、その子の長所を認めてあげた上で叱ってほしいと思います。 「リーダーなんだから、親切にしてね。」 「元気があるのね、弱い子には力を貸してあげてね。」 など、特に言葉遣いとしては、長所を強調するようにするとなお効果があると思います。 叱られた子どもが、反感を持つような叱り方はかえって子どもを悪い方向へ向けてしまう結果となってしまいます。叱るというのは、いけないことをしてしまった時にそれを諭すことであり、その場の感情で声をあらげて怒るのとは異なります。ですから、叱った後も、もとどおり楽しく遊べるようにすることが、叱ったねらいでもありますので、ぜひ、目先の現象だけにとらわれず、ねらいを達成するように心掛けたいものです。 このような叱り方をすれば、恨みをかう心配はいりません。かえって、叱ったためにその子やその子のお母さんからも信頼され、今後も楽しい雰囲気でお付き合いができるようになるのではないでしょうか。(早船 正)